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人権侵犯事件調査処理規程

この規程の全文です。ご参考にどうぞ^^

人権侵犯事件調査処理規程(平成16年法務省訓令第2号)

目次

第1章総則

第1条趣旨
第2条事件の調査及び処理の目的
第3条秘密の保持
第4条情報の収集

第2章救済手続

第1節管轄

第5条管轄
第6条移送
第7条事件の引取り

第2節救済手続の開始

第8条救済手続の開始

第3節調査

第9条共同調査
第10条調査の嘱託
第11条管轄区域外の調査

第4節中止

第12条中止の決定等

第5節措置等

第13条援助等の措置
第14条・第15条人権侵犯の事実が認められる場合の措置
第16条勧告,通告,告発の報告・承認
第17条人権侵犯の事実が認められない場合の処理
第18条打切りの決定
第19条啓発
第20条被害者等に対する処理結果の通知
第21条救済手続終了後の配慮

第3章特別事件の特則

第22条特別事件の開始報告
第23条特別事件の処理の承認
第24条特別事件の処理報告
第25条適用除外

第4章補則

第26条事件に関する帳簿の備付け
第27条関係行政機関等との連携
第28条人権擁護委員の協力
第29条委任規定
附則

第1章総則
(趣旨)
第1条この規程は

(以下事法務局及び地方法務局において行う人権侵犯事件「件」という)の調査及び処理に関し必要な事項を定めるものとする。


(事件の調査及び処理の目的)

第2条事件の調査及び処理は,人権侵犯の疑いのある事案について,関係者に対する援助,調整の措置を講じ,又は人権侵犯の事実の有無を確かめ,その結果に基づき,事案に応じた適切な措置を講ずるほか,関係者に対し人権尊重の理念に対する理解を深めるための啓発(以下「啓発という。)を行い,もって人権侵犯による被害の救済及び予防を図ることを目的とする。

(秘密の保持)

第3条この規程に定める事務を行う場合においては,関係者の秘密を守らなければならない。

(情報の収集)

第4条法務局長又は地方法務局長は,この規程に定める事務を行うために必要な情報の収集に努めなければならない。

第2章救済手続
第1節管轄

(管轄)

第5条事件は,この規程に別段の定めがある場合を除き,人権侵犯の疑いのある事実の発生地又は人権を侵犯されたとされる者(以下「被害者」という)

若しくは人権を侵犯したとされる者(以下「相手方」という。)の居住地を管轄する法務局又は地方法務局において取り扱う。

(移送)

第6条法務局長又は地方法務局長は,事件が当該法務局又は地方法務局の管轄に属しなくなったときは,これを管轄権を有する法務局又は地方法務局に移送しなければならない。


法務局長又は地方法務局長は,事件が当該法務局又は地方法務局の管轄に属する場合においても,相当と認めるときは,これを管轄権を有する他の法務局又は地方法務局に移送することができる。


事件が2以上の法務局又は地方法務局の管轄に属するときは,人権擁護局長が当該事件を取り扱う法務局又は地方法務局を指定する。ただし,その法務局及び地方法務局が法務省組織令(平成12年政令第248号)第68条第2項の事務に関する法務局の管轄区域(以下「法務局の管轄区域」という。)内にあるときは,当該法務局の長がこれを指定する。

(事件の引取り)

第7条法務局長は,必要があるときは,当該法務局の管轄区域内の地方法務局(以下「管内地方法務局」という。)の長が次条の規定による取扱い(以下「救済手続」という。)を開始した事件を移送させて,当該法務局において取り扱うことができる。


法務局長又は地方法務局長は,人権擁護局長から指示を受けたときは,救済手続を開始した事件を人権擁護局に移送しなければならない。

第2節救済手続の開始

(救済手続の開始)

第8条法務局長又は地方法務局長は,被害者,その法定代理人又はその親族等の関係者(以下「被害者等」という。)から,人権侵犯により被害を受け,又は受けるおそれがある旨の申告があり,人権侵犯による被害の救済又は予防を図ることを求められたときは,申告のあった事件が,法務局又は地方法務局において取り扱うことが適当でないと認められる場合を除き,遅滞なく必要な調査を行い,適切な措置を講ずるものとする。


法務局長又は地方法務局長が,人権擁護委員若しくは関係行政機関の通報又は情報に基づき,事件の端緒となる事実に接した場合において,第2条の目的に照らして相当と認めるときは,遅滞なく必要な調査を行い,適切な措置を講ずるものとする。

第3節調査

(共同調査)

第9条法務局は,必要があるときは,管内地方法務局の長が救済手続を開始した事件の調査を共同して行うことができる。


法務局又は地方法務局は,人権擁護局長から指示を受けたときは,事件の調査を人権擁護局と共同して行わなければならない。

(調査の嘱託)

第10条法務局長又は地方法務局長は,必要があるときは,他の法務局又は地方法務局に調査を嘱託することができる。

(管轄区域外の調査)

第11条事件の調査は,必要があるときは,管轄区域外においても行うことができる。

第4節中止

(中止の決定等)

第12条法務局長又は地方法務局長は,事件について,これと関連する訴訟が裁判所に係属しているとき,関係者の所在不明その他調査を行うについて著しい障害があるとき,その他諸般の事情により調査を続行することが相当でないと認めるときは,中止の決定をすることができる。


法務局長又は地方法務局長は,前項の決定をした事件について,中止の事由がなくなったときは,速やかに再起しなければならない。

法務局長又は地方法務局長は,第1項の決定をした事件について,第2条の目的に照らして相当と認めるときは,再起することができる。

第5節措置等

(援助等の措置)

第13条法務局長又は地方法務局長は,事件について,その内容にかんがみ相当と認めるときは,次に掲げる措置を講ずることができる。

(1)
被害者等に対し,関係行政機関又は関係のある公私の団体への紹介,法律扶助に関するあっせん法律上の助言その他相当と認める援助を行うこと援助。

(2)
被害者等と相手方又はその者を指導し,若しくは監督する者(以下「相手方等」という)との関係の調整を行うこと(調整。)

(人権侵犯の事実が認められる場合の措置)


第14条法務局長又は地方法務局長は,事件について,調査の結果,人権侵犯の事実があると認めるときは,前条各号又は次に掲げる措置を講ずるものとする。

(1)
人権侵犯による被害の救済又は予防について,実効的な対応をすることができる者に対し,必要な措置を執ることを要請すること(要請。)

(2)
相手方等に対し,その反省を促し,善処を求めるため,事理を説示すること(説示。)

(3)
相手方等に対し,人権侵犯をやめさせ,又は同様の人権侵犯を繰り返させないため,文書で,人権侵犯の事実を摘示して必要な勧告を行うこと(勧告)。

(4)
関係行政機関に対し,文書で,人権侵犯の事実を通告し,適切な措置の発動を求めること(通。)

(5)
刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)の規定により,文書で,告発すること(告発。)



法務局長又は地方法務局長は,事件について,調査の結果,人権侵犯の事実があると認める場合であっても,人権侵犯の内容,人権侵犯後の事情等により前条各号又は前項各号に掲げる措置を講じないことを相当と認めるときは,措置猶予の決定をすることができる。


法務局長又は地方法務局長は,人権擁護局長から指示を受けたときは,人権擁護局長とともに,第1項各号に掲げる措置を講ずるものとする。

第15条第13条各号及び前条第1項各号に掲げる措置は,併せて講ずることができる。

(勧告,通告,告発の報告・承認)

第16条勧告,通告又は告発の措置を講じようとするときは,法務局長は人権擁護局長に,地方法務局長は人権擁護局長及び当該地方法務局を監督する法務局長(以下「監督法務局長」という。)に,調査の結果を報告しなければならない。


勧告,通告又は告発の措置は,法務局長は人権擁護局長の,地方法務局長は監督法務局長の承認がなければ,講ずることができない。


監督法務局長が前項の承認をするに当たっては,人権擁護局長の指示を受けなければならない。


勧告,通告又は告発の措置を講じて,救済手続を終了したときは,法務局長は人権擁護局長に,地方法務局長は人権擁護局長及び監督法務局長にその旨を遅滞なく報告しなければならない。

(人権侵犯の事実が認められない場合の処理)

第17条法務局長又は地方法務局長は,事件について,調査の結果,人権侵犯の事実がないと認めるときは,侵犯事実不存在の決定をするものとする。


法務局長又は地方法務局長は,事件について,調査の結果,人権侵犯の事実の有無を確認することができないときは,侵犯事実不明確の決定をするものとする。

(打切りの決定)

第18条法務局長又は地方法務局長は,事件について,第8条第1項の申告の撤回又は被害者若しくはその法定代理人から調査を求めない旨の意思表示があった場合その他諸般の事情により調査を終結することを相当と認めるときは,打切りの決定をすることができる。


法務局長又は地方法務局長は,事件について,第12条第1項の規定により中止の決定をした後,その中止の事由が相当期間継続している場合において,再起して事件の調査を行っても第2条の目的を達することができないと認めるときは,再起の上,直ちに打切りの決定をすることができる。

(啓発)

第19条法務局長又は地方法務局長は,事件の調査の過程で,啓発を行うことを相当と認める事実に接したときは,事件の関係者に対し,又は地域社会において,事案に応じた啓発を行うものとする。

(被害者等に対する処理結果の通知)

第20条法務局長又は地方法務局長は,事件について,移送をし,中止の決定をし,又は救済手続を終了したときは,遅滞なく,その旨を第8条第1項の申告をした被害者等に通知するものとする。


前項の場合を除くほか,法務局長又は地方法務局長は,事件について,移送をし,中止の決定をし,又は救済手続を終了した場合において,被害者又は相手方として調査の対象になった者の請求があるときは,その旨を通知するものとする。

(救済手続終了後の配慮)

第21条法務局長又は地方法務局長は,救済手続を終了した事件について,その内容にかんがみ必要と認めるときは,関係行政機関及び関係のある公私の団体と連携し当該事件の関係者との接触を保つなどしてその後の経過を見守り, 人権侵犯による被害の救済又は予防に資するよう配慮に努めるものとする。

第3章特別事件の特則

(特別事件の開始報告)

第22条次に掲げる事件(以下「特別事件」という。)について救済手続を開始したときは,法務局長は人権擁護局長に,地方法務局長は人権擁護局長及び監督法務局長にその旨を遅滞なく報告しなければならない。

(1)
公務員の職務執行に伴う人権侵犯(軽微なものを除く)

(2)
重大な差別的取扱い

(3)
特定の者に対し,職務上の地位を利用し,その者の意に反してする性的な言動(軽微なものを除く)

(4)
社会福祉施設,医療施設,学校その他これらに類する施設における重大な人権侵犯

(5)
児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)第2条に規定する児童虐待

(6)
配偶者(婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)の一方が,他方に対してする重大な人権侵犯。

(7)
高齢者(65歳以上の者をいう。)若しくは障害を有する者(以下この号において「高齢者・障害者」という。)の同居者又は高齢者・障害者の扶養, 介護その他の支援をすべき者が,当該高齢者・障害者に対してする重大な人権侵犯

(8)
新聞,雑誌その他の出版物,放送,映画,インターネット等による名誉,信用等の毀損又は重大なプライバシー侵害

(9)
同和問題に関する人権侵犯

(10)
人権擁護局長が指定した事件

(11)
前各号に掲げるもののほか,特に社会的に影響があり,又は公衆の耳目をひいた人権侵犯

(特別事件の処理の承認)

第23条 特別事件の調査を遂げたときは,法務局長は人権擁護局長に,地方法務局長は人権擁護局長及び監督法務局長に事件の処理に関する意見を添えて当該調査の結果を報告しなければならない。


特別事件については,法務局長は人権擁護局長の,地方法務局長は監督法務局長の承認がなければ,中止の決定をし,又は救済手続を終了することができない。


監督法務局長が前項の承認をするに当たっては,人権擁護局長の指示を受けなければならない。

(特別事件の処理報告)

第24条特別事件について,移送をし,中止の決定をし,又は救済手続を終了したときは,法務局長は人権擁護局長に,地方法務局長は人権擁護局長及び監督法務局長にその旨を遅滞なく報告しなければならない。

(適用除外)

第25条特別事件においては,第16条の規定は適用しない。

第4章補則

(事件に関する帳簿の備付け)

第26条法務局及び地方法務局には,事件に関する帳簿を備えなければならない。

(関係行政機関等との連携)

第27条法務局長又は地方法務局長は,この規程による事件の調査若しくは処理又は情報の収集に当たっては,関係行政機関及び関係のある公私の団体と緊密な連携を図るよう努めるものとする。

(人権擁護委員の協力)

第28条法務局長又は地方法務局長は,この規程による事件の調査若しくは処理又は情報の収集に当たり,相当と認めるときは,人権擁護委員の協力を求めることができる。

(委任規定)

第29条この規程に定めるもののほか,事件の調査及び処理に関し必要な事項は,人権擁護局長が定める。

附則


この訓令は,平成16年4月1日から施行する。


人権侵犯事件調査処理規程(昭和59年法務省権調訓第383号。以下「旧規程」という)は,廃止する。


この訓令の施行前に,旧規程によってされた手続は,この訓令の相当規定によってされたものとみなす。