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殺人事件について…

殺人事件、裁判員裁判、性犯罪のコンテンツで扱っている事件の一覧

大阪此花パチンコ店放火殺人事件


事件概要

 2009年7月5日午後4時15分頃、大阪市此花区の雑居ビル1階のパチンコ店から出火した。約20分後に消し止められたが、約400uの店内は全焼。この火事によって、69歳男性、72歳女性(会社会長)、62歳女性、20歳女性(同店派遣従業員)の4人が死亡し、19人が重軽傷を負った。店員らの証言により、油のようなもの(後にガソリンと判明)をまいて火を点けて逃げた男がいたことが分かり、大阪府警は現住建造物等放火、殺人、殺人未遂容疑で捜査を開始した。死亡した4人を司法解剖した結果、3人が焼死、1人が一酸化炭素中毒死と判明した。

 翌6日、「自分がやった」と山口県警岩国署に男が出頭。供述が状況と矛盾しないことから、此花署捜査本部は、現住建造物等放火、殺人、殺人未遂容疑で41歳男を逮捕した。

 同年8月6日午後11時20分頃、重症だった50歳男性(無職)が入院先の大阪市内の病院で死亡。事件での被害死者が5名となった。

更新日時:
2009年08月07日




問われる可能性がある罪

 逮捕容疑は、5日午後4時10分頃、パチンコ店南東側の出入り口から侵入、青いバケツに入ったガソリンを通路にまき、火を放って南西側の出入り口から逃走したこと。

 容疑者は、パチンコ店の店内で、ガソリンを撒き、火を放ち、放火して、約400uの店内を全焼させていますので、現住建造物等放火の罪の「放火して、現に人がいる建造物を焼損した者」に当てはまります。

 無差別に人を殺そうとして、パチンコ店の店内にガソリンを大量に撒き、火を放ち、4人の方を殺していますので殺人罪、また、19名の方に対しても、死に至らずとも重軽傷を負わせていますので殺人未遂罪に当てはまります。

刑法

(現住建造物等放火)
第百八条  放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

(殺人)
第百九十九条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

(未遂罪)
第二百三条  第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

 よって、これらの現住建造物等放火、殺人、殺人未遂の罪に問われる可能性があります。

 現住建造物等放火、殺人、殺人未遂罪は、どの罪も裁判員裁判の対象の罪になります。
更新日時:
2009年07月13日




放火行為で殺人罪に問われる場合には・・・

 この事件では、問われるだろう罪が、現住建造物等放火、殺人、殺人未遂罪などで、どれも、裁判員裁判の対象となっている罪です。

 しかも、どちらの罪の法定刑も、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役となっており、最高刑の死刑が規定されています。

 本件でも、4人死亡、19人重軽傷と被害に遭われた方が多くみえます。

 これだけの被害者が出ている場合には、刃物や拳銃を使っての犯行で、刑事責任能力がある場合には、死刑しかありえないのですが・・・ 現住建造物等放火の場合は、現住建造物等放火の罪の場合の量刑例にあるように、多人数の被害死者が出ていても、無期懲役になっている場合があります。

 ただし、被害死者が4名、重軽傷者が19名という結果の重大性から、有期刑の選択はありえませんので、量刑には、無期若しくは死刑が選択されることになると思います。

 そして、現住建造物等放火の罪と一緒に問われる殺人罪の故意(罪となる事実を認識し、かつ結果の発生を意図または認容していること)の程度が、確定的殺意なのか未必の殺意なのかで、死刑と無期の分かれ道になります。

 故意だけでなく、他の要件も関係してきますが、4人被害死者が出ているので、確定的殺意の証明があれば、死刑の可能性が高くなり、未必の殺意に留まると、4人被害死者が出ていても無期懲役になる可能性が高くなります。

 被告に対して死刑判決が下る事件数は、総事件数から見ると、ほんのわずかな数字なのですが、死刑の可能性がある事件は、事件概要などから分かります。たぶん本件は、一般人である裁判員の方々が、死刑も選択肢に入れた量刑判断をしなければならなくなると思います。

 制度が施行されてから2ヶ月弱ですから裁判員裁判対象の事件数も多くないのですが、施行後これまでに起訴された事件で死刑もありうるような事件は無かったように思いますし、この事件以前には、それらしきニュースも聞きませんでしたので、本件が裁判員裁判制度で刑罰に死刑もありうる最初の事例になると思います。

 現時点では、まだ起訴すらされていない段階ですが、死刑選択の可能性がありますので、参考までに、これまでどのような要件から量刑判断されてきたのかを、本件に当てはめて書いていきます。
更新日時:
2009年07月13日




犯罪成立には、故意による行為と刑事責任能力があることの証明が必要

 罪に問うには、した行為が、故意による行為であることと、刑事責任能力があることが必要です。

刑法

(故意)
第三十八条  罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
2  重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
3  法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

(心神喪失及び心神耗弱)
第三十九条  心神喪失者の行為は、罰しない。
2  心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

 容疑者は、放火という行為によって無差別殺人を企てたのですが、犯行に灯油とは比較にならないくらい揮発性、引火性を持ったガソリンを使っています。

 ガソリンは、揮発性、引火性が高いので、当然の事ながら取扱には注意を要するのですが、容疑者は、国家資格の危険物取扱者の資格を持っているので、そういう点について熟知しています。

 危険物であるのを熟知しているので、犯行に使うガソリンを運ぶために、専用の携行缶を犯行直前に購入していますし、自分の身にガソリンがかからないよう、また、パチンコ店内の床面に一気に流しやすいようにガソリンを携行缶からバケツに移し替え、両手を使ってバケツに入れたガソリンを通路に流しています。

 故意の構成要素でもある「結果の発生を意図または認容」について、危険物取扱者でありながら、犯行にガソリンを使っていますので、ガソリンに引火させると、どういう結果を引き起こすかということを分かっていながら放火したことになります。

 容疑者が取った行動は「バケツに入ったガソリンを通路にまき、火を点けた」という、時間にすると数秒というすごく短時間の行動なのですが、無差別に人を殺すために、わざと人が多いパチンコ店を選び、放火の被害が広がるようにバケツの中のガソリンを通路に流しています。

 ガソリンが揮発性、引火性が高いので、相当量のガソリンを撒き、火を放てば、パチンコ店の店内は、一瞬で火の海になります。

 今の衣服は、化学繊維を使っているのも多くあるのですが、化学繊維は火に非常に弱く、引火すると溶けて燃えてしまいます。

 犯行当時になったであろう状況を想像すると、被害に遭われた方々が気の毒でならないのですが・・・

 容疑者が、ガソリンを撒き、火を放った瞬間に、被害に遭われ焼死された方々の周囲は一面火の海になり、被害者自身が着ていた衣服にも引火し、火だるまの状態になったと思います。ですので、逃げ遅れではなく、逃げる暇すら無かった状況だったと思います。

 危険物取扱者である容疑者が、無差別殺人の殺害方法にガソリンを使い、人が多いパチンコ店での放火行為を選択したことで、犯行前からこういう状況を予見して犯行に及んでいますので、現住建造物等放火行為の故意だけでなく、殺人、殺人未遂罪も、確定的に殺意があっての犯行だったことが分かります。

 そして、犯行に使うガソリンを運ぶために、専用の携行缶を犯行直前に購入するなど、事前に周到に準備していますし、ガソリンを携行缶からバケツに移し替えるなどして、放火の被害が広がるように工夫し冷静に犯行に及んでいます。

 また、犯行後現場から逃走していますが、本件の刑事責任を取るために自分から出頭するなど、是非善悪の判断が出来ていますので、刑事責任能力については、精神鑑定をするまでもなく、完全責任能力があると判断できます。ただし、刑罰に死刑もありうる事例ですので、万全を期すために精神鑑定をしておくことは必要だと思います。
更新日時:
2009年07月14日




本件の犯罪行為を死刑適用基準と照らし合わせてみると・・・

 まずは、有罪か無罪の判断ですが、問われる罪の構成要件を満たし、故意による犯行の証明が出来、刑事責任能力があると判断されれば、その行為の罪が有るとなります。

 有罪となれば、今度は、どの程度の罰の罪になるのか、量刑判断に移ります。

 本件は、現住建造物等放火と殺人という、法定刑に死刑の規定がある重い罪です。

 有期刑は、被害死者の多さなどから、ありえませんので、無期か死刑のどちらかになると思いますが、死刑を選択する際には、死刑適用基準の要件(死刑を科す際に考慮すべき要件についての最高裁判例)を満たす必要もあります。

 ですので、死刑に関してのページの死刑適用基準で紹介した以下の12項目の要件をこの事件の場合に当てはめて考えてみます。

1 犯罪の性質
2 殺人の計画性
3 犯罪の主導性
4 犯行の動機及び動機への情状
5 犯行態様、特に殺害方法の執拗性、残虐性
6 結果の重大性、特に殺害された被害者数
7 遺族の被害感情
8 社会的影響
9 犯人の年齢
10 殺人の前科
11 犯行後の情状
12 犯行後の反省

要件 該当
1 犯罪の性質

 現住建造物等放火罪や殺人罪は、共に法定刑に死刑の規定がある凶悪犯罪ですから、罪質は悪いです。
2 殺人の計画性

 殺人の計画性とは、いつの時点で殺人を計画したかということです。

 ニュースの中に「事件の数日前から人を殺したいと思うようになった」、「一度にたくさん殺せるので、ガソリンをまいて放火した。刃物で殺すのは難しいと思った」という供述がありました。

 ガソリンへ引火させて、無差別に大量殺人をしようと犯行計画を立て、事前にガソリン用携行缶、ガソリンなどを購入して犯行に及んでいますので、かなり早い時期に殺人計画を立てていることが分かります。よって、殺人計画性は強固なものと言えます。
3 犯罪の主導性

 単独犯ですから、主導性はあります。
4 犯行の動機及び動機への情状

 ニュースの中に「通り魔みたいに人を殺したい」、「仕事も金もなく、人生に嫌気がさした。死刑になってもかまわないと思ってやった」とありました。言うまでもなく、自分勝手な動機です。
5 犯行態様、特に殺害方法の執拗性、残虐性

 ただ単に、パチンコを楽しんでいた何の落ち度も無い客などに対して、大量のガソリンを撒き、火を放ち、被害者が逃げる間もなく火だるまにし、焼死させたということは、生きたまま焼き殺していることであり、残虐この上ない行為です。
6 結果の重大性、特に殺害された被害者数

 容疑者の行為によって、被害死者4名、重軽傷者19名という重大な結果を招いています。
7 遺族の被害感情

 突然、家族の命が奪われたのですから、言うまでもなく、遺族の方々の処罰感情は峻烈だと思います。
8 社会的影響

 被害者と加害者の関係が、全くの赤の他人同士ですから、公共性は非常に高くなります。

 そして、「だれでもいいから殺したかった」という供述内容が出ていた記事がありましたが、もしそうなら、誰が犯罪に巻き込まれていたとしても不思議でないことになります。社会的影響は、最悪です。
9 犯人の年齢

 容疑者は41歳ですから、死刑適用可能な18歳をとうに超えています。

 刑罰に死刑を選択するのは問題ありません。
10 殺人の前科

  どういう前科があるかは、捜査で調べているだろうと思います。ただ、たぶん初犯でしょうし、殺人の前科は無いと思いますが・・・ 被害死者数が1人の場合でも、被告が過去に殺人を犯して通算すると2人以上の複数になる場合があります。

 この要件は、そういう場合を想定してあります。

 本件は、無差別殺傷事件です。複数殺害の場合には、初犯でも、他の要件を満たせば、死刑の可能性が高くなりますし、結果が重大な場合には、殺人前科が無いことをもって死刑を回避する理由にはなりません。初犯で、殺人前科が無い場合でも、実際に死刑判決が出ています。
11 犯行後の情状

 捜査の結果、店の防犯カメラに、「ガソリンを入れたバケツを両手で持ち、マッチを口にくわえて入店する様子」と「その後バケツからガソリンを床に流すようにまくと、擦ったマッチをを投げ込んで一目散に逃げ出している」画像が鮮明に写っていたのが分かっています。

 ニュースによると、容疑者は、火を点けた後、店外で燃える様子を眺めていたようですが、その後逃走しています。
12 犯行後の反省

 「逃走途中の岡山市内で事件のニュースを見た。えらいことをしてしまい、死刑になっても仕方がないと思った」、「被害者に申し訳ないことをした。けじめをつけなければ」という供述内容がニュースで流れていました。

 自分から出頭していますので、多少は反省しているとは思いますが・・・この項目は、過度に評価しないよう最高裁が釘を刺しています。

 それに、被害に遭われた方々への心からの謝罪や被害弁償など、被害に遭われた方や被害者遺族の処罰感情が和らぐくらいの姿勢を表さないと評価されません。

 このように、犯行後逃走しても、責任を取るために自分から出頭するなどして、更生の可能性は見えますが、「仕事も金もなく、人生に嫌気がさした。死刑になってもかまわないと思ってやった」という自分勝手な無差別殺傷事件であり、死者4名、重軽傷者19名という結果の重大性、数日前から被害者に逃げる間も与えないくらい揮発性引火性が高いガソリンを大量に使用して放火する計画を立てその通りに実行した強固な殺人計画性、何の縁もない人を生きたまま焼き殺すという殺害方法の残虐性などから、罪責は非常に重く、死刑が止むを得ない事例と言えます。
更新日時:
2009年07月16日




本件の犯罪行為での罪の加重減軽を考えてみると・・・

 現住建造物等放火罪も殺人罪も、条文には、死刑が謳ってありますが、被害死者が何人以上の場合に死刑という但し書きがあるわけではありません。あくまで、犯した罪に対して総合的に判断して量刑を決めますので、その人間に対して死刑やむなしと判断したら、被害死者数に関係なく死刑はありえます。

 どのようにして罪の重さを決めていくのかを、今回の事例について刑法の条文を紹介しながら簡単に書いていきます。

 死刑適用基準に照らし合わせたら、死刑が止むを得ない事例となりましたので、スタートを死刑で考えます。

刑法

(加重減軽の順序)
第七十二条  同時に刑を加重し、又は減軽するときは、次の順序による。
一  再犯加重
二  法律上の減軽
三  併合罪の加重
四  酌量減軽


 まずは、一 再犯加重ですが、殺人前科は無いと思いますから、加重なしで死刑


 次に、二 法律上の減軽ですが、これは、刑事責任能力についてです。

刑法

(心神喪失及び心神耗弱)
第三十九条  心神喪失者の行為は、罰しない。
2  心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

 ガソリンによる放火で事前にいろいろな道具を周到に準備していますから、心神喪失状態や心神耗弱状態での犯行とするには到底無理があり、完全責任能力があると考えられますから、法律上の減軽なしで死刑


 そして、三 併合罪の加重について

刑法

(併合罪)
第四十五条  確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

(併科の制限)
第四十六条  併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。

(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)
第五十四条  一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

(刑の軽重)
第十条
3  二個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は、犯情によってその軽重を定める。

 容疑者がした行為は放火行為だけですが、無差別殺傷(殺人、殺人未遂行為)のために放火行為を利用していますし、放火の結果、現に人がいる建造物を焼損し、死者4名、重軽傷者19名の被害者を出しています。

 一つの行為で2つ以上の罪に触れているため、第54条の規定により、最も重い刑になるように選択しなければいけませんが、選択しようにも、殺人罪も現住建造物等放火罪も法定刑は死刑又は無期懲役、5年以上の懲役と規定されてあり、最高刑の死刑が入っています。

 第54条の規定では判断できませんので、第10条第3項の規定により、4名に対しての殺人罪、19名に対しての殺人未遂罪(死刑又は無期懲役、5年以上の懲役)と現住建造物等放火罪(死刑又は無期懲役、5年以上の懲役)のどちらが重いのかを判断して、重い方の刑で考えます。

 仮に、4名に対しての殺人罪、19名に対しての殺人未遂罪が死刑、現住建造物等放火の罪を無期懲役とすると、死刑と無期は併科できませんので、重い刑の死刑のみになります。

 三 併合罪の加重については、第46条の併科の制限により死刑に併合できる刑が無いので、加重なしで死刑


 最後に、四 酌量減軽についてですが、現状では、情状を酌量すべき部分が見当たりません。強いて言えば、自分から警察に出頭したことですが・・・

刑法

(自首等)
第四十二条  罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2  告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。

 条文を見て分かるように、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」となっています。容疑者の映像が防犯カメラに映っていましたし、事件は衆人環視の中で起きています。捜査を開始していましたので、容疑者を特定するのも時間の問題でした。

 自首扱いになるのか疑問でしたので、出頭という表現を使っていますが、仮に、その行為を自首扱いにしたとしても、あくまで「刑を減軽することができる」と裁判官の裁量です。自ら出頭という行動をもって死刑を無期懲役まで減軽する材料とするには無理がありますので死刑は変わらずです。


 容疑者がした行為の罪に対する罰を、判例(死刑適用基準)や法の加重減軽の手順に沿って考えてみても、最終的な量刑は死刑になりました。


 放火による殺人行為は、確定的な殺意を立証するのが難しいので、被害死者数が多くても無期懲役刑があるのですが、本件の容疑者は、ガソリンの危険性を熟知している危険物取扱者(国家資格)の資格保持者です。

 過失でも業務上過失致死傷罪に問われる危険物取扱者の資格保持者が、ガソリンの揮発性、引火性の高さを熟知しているにも関わらず、明らかにガソリンを撒き火を放った(故意による)行為が防犯カメラの映像に残っています。

 危険物取扱者資格保持と防犯カメラの映像は、客観的に判断できる証拠となりますので、確定的殺意の立証も容易になります。

 本件は、容疑者が確定的殺意を持ち、人が多いパチンコ店の店内に放火し、死者4名、重軽傷者19名という重大な結果を引き起こしていますので、量刑に死刑が止むを得ないと言わざるを得ない事例だと思います。
更新日時:
2009年07月16日




起訴状況

刑法

(現住建造物等放火)
第百八条  放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

(殺人)
第百九十九条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

(未遂罪)
第二百三条  第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

罪名 該当法 法定刑 量刑例
殺人罪 刑法第199条 死刑、無期、5年以上の懲役 殺人罪の場合
殺人未遂罪 刑法第203条
現住建造物等放火罪 刑法第108条 死刑、無期、5年以上の懲役

※ 求刑死刑に対しての判決例死刑がやむを得ない場合死刑執行方法
更新日時:
2009年12月03日




統合失調症罹患者と責任能力

被告人が犯行当時統合失調症に罹患していたからといって、そのことだけで直ちに被告人が心神喪失の状態にあったとされるものではなく、その責任能力の有無・程度は、被告人の犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して判定すべきである。
最高裁判例 昭和59年7月3日

 ※2002年より「統合失調症」に改められているため、判例の「精神分裂病」部分を「統合失調症」と表記。
更新日時:
2009年12月03日




時系列
日付 摘要
2009 07/05 午後4時15分頃、大阪市此花区の雑居ビル1階のパチンコ店から出火
約20分後に消し止められたが、約400uの店内は全焼
4人が死亡し、19人が重軽傷
07/06 山口県警岩国署に「自分がやった」と男が出頭
大阪府警此花署捜査本部が、41歳男を現住建造物等放火、殺人、殺人未遂容疑で逮捕
司法解剖の結果、亡くなられた4名のうち3名は焼死、1名が一酸化炭素中毒と判明
焼死で亡くなられた3名の方々: 69歳男性(無職)、72歳女性(会社会長)、20歳女性(同店派遣従業員)
一酸化炭素中毒死で亡くなられた方:62歳女性(会社員)
07/08 大阪府警が、41歳無職男を殺人、現住建造物等放火などの容疑で大阪地検に送検
07/18 41歳容疑者立ち会いでパチンコ店の実況見分
07/24 大阪地裁が、10月26日まで約3ヶ月間の鑑定留置を決定
08/06 重症だった50歳男性(無職)が入院先の大阪市内の病院で死亡。被害死者が5名となる。
死因:広範囲のやけどによって感染症を引き起こし多臓器不全
10/23 大阪地裁が精神鑑定を行うための鑑定留置延長を認める。(期間:11月30日まで)
12/03 約4ヶ月にわたる精神鑑定では「統合失調症」と診断。地検は容疑者の供述などから「犯行時に責任能力はあった」と判断。大阪地検が41歳無職容疑者を殺人、現住建造物等放火などの罪で起訴
2011 09/06 第一審 初公判
10/17 第一審 論告求刑公判 検察側は被告に対して死刑を求刑
10/31 第一審 判決公判 大阪地裁(和田真裁判長)は、求刑通り死刑を言い渡し
11/02 弁護側は判決を不服として控訴
2013 05/23 控訴審 初公判
07/31 控訴審 判決公判 大阪高裁(中谷雄二郎裁判長)は、被告側の控訴を棄却
08/01 弁護側は判決を不服として上告
2016 01/19 上告審 口頭弁論
02/23 上告審 判決公判 最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は、被告側の上告を棄却
03/11 最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は48歳被告の判決訂正申し立てを棄却決定
更新日時:
2016年3月15日




公判関係

第一審 大阪地裁(和田真裁判長) 裁判員裁判


事件番号:平成21年(わ)6154号|傍聴券交付情報:大阪地方裁判所
日付 摘要
2011 09/02 裁判員選任手続き
09/06 初公判 (罪状認否、冒頭陳述) 罪状認否で被告は「間違いありません」と起訴事実を認める
 検察側は、仕事が見つからず生活苦に陥った被告が「だれでもいいから殺して、むしゃくしゃを晴らしたいと考えた」と述べ、「犯行時には完全責任能力があった」と述べた。
 弁護側は「病気による妄想で判断能力が低下していた」と、心神耗弱による減刑を訴えた。
09/07 第2回公判 (証人尋問) 事件で大やけどを負った男性が証人出廷し、「極刑を望みます」と述べる
09/13 第3回公判  
09/14 第4回公判  
09/15 第5回公判  
09/21 台風接近のため、公判中止
09/22 第6回公判 (弁護側による被告人質問) 被告は「自分を見て見ぬふりの世間に復讐したかった」と犯行動機を語る。 被告への被告人質問要旨
09/30 第7回公判 (検察側、被害者参加人による被告人質問) 被告は「当然死刑でいいと思う」と述べ、謝罪を求めた遺族に「今さら謝る気もない」と述べる
10/04 第8回公判 (証人尋問) 精神鑑定をした医師の一人が、犯行時の被告について「妄想に行動が左右される状態ではなかった」と述べる
10/05 第9回公判 (証人尋問) 捜査段階で「軽度の統合失調症」と診断した医師は、「強固な妄想に突き動かされて事件を起こしており、責任能力は限定的だった」と述べる
10/06 第10回公判 (証人尋問) 精神鑑定をした鑑定医の一人は、「被告は覚醒剤の影響による精神障害だったが、事件当時、合理的な判断はできた」と証言
10/11 第11回公判 (弁護側の冒頭陳述、オーストリアの法医学者の証人尋問) 弁護側は冒頭陳述で「絞首刑による死刑は残虐な刑罰を禁じた憲法に違反する」と主張
 海外の事例を踏まえ、絞首刑の死因について、窒息死の他に「首が切断されるケースがある」と述べる
10/12 第12回公判 (土本武司元最高検検事の証人尋問) 「(絞首刑は)正視に堪えない。限りなく残虐に近いものだ」と証言
10/13 第13回公判 (遺族、被害者による意見陳述) 遺族の一人は「被告の責任の取り方として、死刑を望みます」と訴える
10/17 第14回公判 (検察側:論告求刑、弁護側:最終弁論、被告の最終意見陳述) 検察側は「極めて残虐、非道な無差別殺人で、死刑を選択すべき事案の中でもより重大」として死刑を求刑。死刑を求刑された被告は、求刑の瞬間も表情変わらず
10/18
〜31
裁判官・裁判員評議
10/31
第15回公判 (判決) 大阪地裁は、求刑通り死刑を言い渡し
 被告は精神鑑定で統合失調症と診断されたが、和田裁判長は事件当時は責任能力があったと認定。絞首刑による死刑は憲法に違反しないと判断し、弁護側の死刑回避の主張を退ける
※裁判官・裁判員評議は予定では18、19、24、31日

控訴審 大阪高裁(中谷雄二郎裁判長)
日付 摘要
2013 05/23 初公判 (冒頭陳述) 弁護側は死刑とした地裁判決の破棄、検察側は控訴棄却を求めた。弁護側は改めて「妄想の影響を受け、責任能力は限定的だった」と主張
06/27  第2回公判 (弁論) 弁護側が改めて死刑の回避を主張し、結審
07/31  第3回公判 (判決) 大阪高裁は、死刑とした一審大阪地裁判決を支持、被告側の控訴を棄却
2013年8月1日、弁護側は高裁判決を不服として最高裁に上告

上告審 最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)

事件番号:平成25年(あ)1329号
日付 摘要
2016 01/19 口頭弁論 弁護側は「被告には事件当時から現在まで妄想がある。死刑は回避すべきだ」と主張。検察側は「妄想はあるが犯行への影響は軽微。極刑はやむを得ない」として結審
02/23  判決 最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は、被告側の上告を棄却
2016年3月11日付けで、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は48歳被告の判決訂正申し立てを棄却決定
更新日時:
2016年3月15日




被告の判決状況

氏名 罪名 第一審 控訴審 上告審
求刑 判決 裁判所・日付 判決 裁判所・日付 判決 裁判所・日付
高見素直 殺人などの罪 求刑死刑 死刑 大阪地裁
2011/10/31
控訴棄却 大阪高裁
2013/7/31
上告棄却 最高裁第3小法廷
2016/2/23
更新日時:
2016年2月23日



殺人事件、裁判員裁判、性犯罪のコンテンツで扱っている事件の一覧


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