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求刑死刑で無期判決以下の事件

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東京南青山強殺事件


事件概要

 2009年11月16日午前11時40分頃、東京都港区南青山4丁目のマンション室内で住人の74歳男性が死亡しているのを親族の女性が見つけ、110番通報。部屋には物色の痕跡があり、男性は、首を刃物で突き刺され、殺されていた。警視庁は殺人事件と断定し、捜査本部を設置した。

 2010年1月20日、警視庁赤坂署捜査本部は、器物損壊罪で起訴した住所不定、無職の59歳男を、2009年11月15日午後3時頃、金品を奪う目的で港区南青山の74歳男性宅に侵入、首を刃物で突き刺すなどして殺害した疑いが強いとして、強盗殺人容疑で逮捕。2月10日、東京地検は、男を強盗殺人などの罪で起訴した。

 男は、1988年に妻を刺し殺し、部屋に火をつけ当時3歳だった次女を焼死させたとして、懲役20年判決を受け、1989年11月に判決確定。2009年5月に出所していた。

東京都港区南青山4丁目の周辺地図
更新日時:
2011年2月8日




起訴状況

刑法

(強盗致死傷)
第二百四十条  強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

(住居侵入等)
第百三十条  正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

(器物損壊等)
第二百六十一条  前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

罪名 該当法 法定刑 量刑例
強盗殺人罪 刑法第240条 死刑、無期懲役 強盗殺人罪の場合
住居侵入罪 刑法第130条 3年以下の懲役、10万円以下の罰金
器物損壊罪 刑法第261条 3年以下の懲役、30万円以下の罰金、科料

※ 死刑がやむを得ない場合死刑執行方法無期懲役仮釈放者の平均在所年数
更新日時:
2011年2月8日




時系列
日付 摘要
1988 11/ 男は、妻を刺殺、部屋に火をつけ当時3歳だった次女を焼死させる(被害死者2人)
1989 11/ 千葉地裁は、殺人、現住建造物等放火などの罪で求刑通り懲役20年判決
(現行法の併合罪での有期の最長は懲役30年だが、1988年当時の刑法の併合罪での有期の最長は懲役20年)
2009 05/ 男は、旭川刑務所での服役を終え、出所
11/15 午後3時頃、東京都港区南青山のマンションで住人の飲食店店長の74歳男性が殺害される
11/16 午前11時40分頃、74歳男性が、布団の上で、うつぶせの状態で血を流して死んでいるのを義理の姉が発見し、110番通報
警視庁は、74歳男性が何者かに殺されたと断定し、赤坂署に捜査本部を設置
11/17 住所不定・無職の59歳男を器物損壊容疑で逮捕
  東京地検は、無職の59歳男を器物損壊罪で東京地裁へ起訴
2010 01/20 赤坂署捜査本部は、11月15日午後3時頃、金品を奪う目的で港区南青山の74歳男性宅に侵入、首を刃物で突き刺すなどして殺害したとして、器物損壊罪で起訴した無職の59歳男を強盗殺人容疑で再逮捕
容疑者は黙秘。が、室内から同容疑者の掌紋が見つかり、靴底から被害者の74歳男性のものとみられる血痕も検出。玄関前の手すりにも同容疑者の指紋が付着していた。
02/10 東京地検は、無職の59歳男を強盗殺人などの罪で東京地裁へ追起訴
2011 02/24 第一審 初公判
03/04 第一審 論告求刑公判 検察側は被告に対して死刑を求刑。弁護側は全面無罪を主張
03/15 第一審 判決公判 東京地裁は被告に対して、求刑通り死刑判決 弁護側は即日控訴
2012 07/17 控訴審 初公判
2013 06/20 控訴審 判決公判 東京高裁は一審判決を破棄し、無期懲役を言い渡し
07/01 検察側は、二審判決を不服として最高裁に上告
07/03 弁護側は、二審判決を不服として最高裁に上告
12/25 東京高検は「国民の視点を反映した判断を積み重ねるべき」とする上告趣意書を最高裁に提出
2015 02/03 最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は、検察、弁護側双方の上告を棄却する決定
02/12 最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は、被告側の異議申し立てを棄却決定
更新日時:
2015年2月18日




黙秘と自由心証主義

 容疑者(被告人)が黙秘するのは、「自己の意思に反して供述をする」ことを強要されない(刑事訴訟法第198条第2項)ですし、「終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる」(刑事訴訟法第291条第3項、同第311条第1項)ので、一向に構いませんが、検察が罪を立証できる証拠を揃えていると、「証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる」(刑事訴訟法第318条)ため、逆に、黙秘することで否認とみなされ、反省の色なしと、刑が加重される場合があります。

日本国憲法

第38条第1項  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。


刑事訴訟法

第198条第2項 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。

第291条第3項 裁判長は、起訴状の朗読が終つた後、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨その他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げた上、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。

第311条  被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。

第318条  証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。

 本件は、リークされた情報だけでも、事件現場の室内に掌紋が残っていたり、玄関前の手すりに指紋が残っていたり、被害者の血痕が被告の履いていた靴の底に付着していたりと、被告人が現場に行っていないとありえないことがいくつかあります。

 現場に行っていないとあり得ない状況なのに、現場には行っていないとの主張だし、被告人は黙秘を通しているし・・・

 こういう状況で黙秘をすると、心証が悪くなってしまうのですよね。

 それにしても、本件では、人定質問まで黙秘してしまったけど、今後の被告人質問とか、被告人の最終陳述など、被告が話さないことにはどうしようもないのは、どうするのだろう? 同様に黙秘するのかなぁ・・・
更新日時:
2011年2月26日




殺人前科がある場合の量刑の傾向


 被告の行為が有罪である場合、本件の量刑を決める際に過去の前科も考慮しますが、その前科が殺人罪による場合は、当然の事ながら、犯罪傾向が強いということで、より重い刑が選択される場合があります。

刑法

(加重減軽の順序)
第七十二条  同時に刑を加重し、又は減軽するときは、次の順序による。
一  再犯加重
二  法律上の減軽
三  併合罪の加重
四  酌量減軽

 以下は、2003年以前の死刑確定事例(2003年末時点未執行)2004年以降の死刑確定事例の中から、殺人前科があった者や無期懲役の宣告を受けて服役し、仮釈放中の身で殺人行為を犯した者を抜粋してあります(データには現時点で執行済みの死刑囚も含みます)。当該事件で複数の死者が出た場合は言うまでも無く、当該事件の被害死者が1人であったとしても、また、一審で無期懲役判決が出ていたとしても、後に、殺人前科があることで死刑判決になった事例です。

 ちなみに、備考欄については、当該事件の前の刑が有期刑の場合は「殺人前科」としてありますが、無期懲役の場合は、無期懲役刑が満期が無く死ぬまでの刑のため、前科という表現をしていません。仮釈放されたとしても、あくまで、仮釈放中の身ですから、「無期懲役仮釈放中の犯行」としてあります。

死刑囚名 事件日 主たる罪 死者数 第一審 控訴審 上告審 管轄 備考 執行
金川一 1979/9/11 殺人 1 1982/6/14
熊本地裁八代支部
無期懲役
1983/3/17
福岡高裁
死刑
1990/4/3
最高裁第3小法廷
上告棄却
福岡 殺人前科  
牧野正 1990/3/12 殺人 1 1993/10/27
福岡地裁小倉支部
死刑
1993/11/16

控訴取下
福岡 無期懲役
仮釈放中の犯行
2009/1/29
福岡拘置所
死刑執行
萬谷義幸 1988/1/15 強盗殺人 1 1991/2/7
大阪地裁
死刑
1997/4/10
大阪高裁
控訴棄却
2001/12/6
最高裁第1小法廷
上告棄却
大阪 無期懲役
仮釈放中の犯行
2008/9/11
大阪拘置所
死刑執行
横田謙二 1999/1/9 殺人 1 2001/6/28
さいたま地裁
無期懲役
2002/9/30
東京高裁
死刑
2002/10/24

上告取下
東京 無期懲役
仮釈放中の犯行
 
持田孝 1997/4/18 殺人 1 1999/5/27
東京地裁
無期懲役
2000/2/28
東京高裁

死刑
2004/10/13
最高裁第2小法廷
上告棄却
東京 殺人前科 2008/2/1
東京拘置所
死刑執行
西川正勝 1991/12/13
-92/1/5
強盗殺人 4 1995/9/12
大阪地裁
死刑
2001/6/20
大阪高裁
控訴棄却
2005/6/7
最高裁第3小法廷
上告棄却
大阪 殺人前科  
中山進 1998/2/19 殺人 2 2001/11/20
大阪地裁
死刑
2003/10/27
大阪高裁
控訴棄却
2006/6/13
最高裁第3小法廷
上告棄却
大阪 無期懲役
仮釈放中の犯行
 
平野勇 1994/12/19 強盗殺人 2 2000/2/17
宇都宮地裁
死刑
2002/7/4
東京高裁
控訴棄却
2006/9/1
最高裁第2小法廷
上告棄却
東京 殺人前科 2008/9/11
東京拘置所
死刑執行
武藤恵喜 2002/3/14 強盗殺人 1 2003/5/15
名古屋地裁

無期懲役
2004/2/6
名古屋高裁
死刑
2007/3/22
最高裁第1小法廷
上告棄却
名古屋 殺人前科  
西山省三 1992/3/29 強盗殺人 1 1994/9/30
広島地裁

無期懲役
1997/2/4
広島高裁

控訴棄却
1999/12/10
最高裁第2小法廷
破棄差戻
広島 無期懲役
仮釈放中の犯行
 
2004/4/23
広島高裁
死刑
2007/4/10
最高裁第3小法廷
上告棄却
山地悠紀夫
2005/11/17
強盗殺人 2 2006/12/13
大阪地裁
死刑
2007/5/31

控訴取下
大阪 殺人前科 2009/7/28
大阪拘置所
死刑執行
長谷川静央
2005/5/8
殺人 1 2007/1/23
宇都宮地裁
死刑
2007/8/16
東京高裁
控訴棄却
2008/3/17

上告取下
東京 無期懲役
仮釈放中の犯行
 

 また、2003年以前に確定し、既に執行された事例の中にも、殺人前科や無期懲役仮釈放中の状態で再度殺人行為を犯し、死刑がやむを得ないと刑罰に死刑が選択された事例は多くあります。

執行日 執行拘置所 死刑囚名 年齢 罪名 死者数 備考 確定年月
1987/09/30 東京拘置所 矢部光男 35 殺人などの罪 2 殺人前科 1980/03
1989/11/10 福岡拘置所 近藤武数 殺人などの罪 1 無期懲役仮釈放中 1979/07
1994/12/01 仙台拘置支所 佐々木和三 65 強盗殺人などの罪 2 無期懲役仮釈放中 1985/07
1995/12/21 東京拘置所 篠原徳次郎 68 殺人などの罪 2 無期懲役仮釈放中 1988/06
1998/06/25 福岡拘置所 武安幸久 66 強盗殺人などの罪 1 無期懲役仮釈放中 1990/12
東京拘置所 島津新次 66 強盗殺人などの罪 1 無期懲役仮釈放中 1991/02
1999/09/10 東京拘置所 佐藤真志 62 殺人などの罪 1 無期懲役仮釈放中 1992/03
仙台拘置支所 高田勝利 61 強盗殺人などの罪 1 無期懲役仮釈放中 1992/07
福岡拘置所 森川哲行 69 強盗殺人などの罪 2 無期懲役仮釈放中 1992/10
1999/12/17 福岡拘置所 小野照男 62 強盗殺人などの罪 1 殺人前科 1981/06
2002/09/18 名古屋拘置所 浜田美輝 51 殺人などの罪 3 殺人前科 1998/06

 殺人前科がある場合は、大抵の場合、前の時点で重い量刑を受けています。再度殺人事件を起こしたとなると、長い期間服役したのにも関わらず、懲りずに、再び人を殺したことになります。

 殺人前科がある場合の被告は、被害死者が1人であっても、死刑適用基準の罪質や犯行態様などの他の要件を満たしていると、犯罪傾向が強く、死刑の選択もやむを得ないと判断されやすくなりますし、実際に死刑判決となる事例もこのように存在しています。

 ただし、殺人前科があったとしても、当該事件の殺人計画性が希薄であったり、罪質が利欲的でなかったり、酌むべき事情が多かったりすれば、死刑がやむを得ないとは言い難いので、死刑回避される場合もあります。
更新日時:
2011年3月3日




公判関係

第一審 東京地裁 刑事第7部(吉村典晃裁判長) 裁判員裁判


事件番号:平成22年合(わ)第34号|傍聴券交付情報:東京地裁
日付 摘要
2011 02/24 初公判 (検察・弁護側:冒頭陳述) 被告は罪状認否で黙秘し、弁護人が全面無罪を主張
検察側は、被告の靴底に付着していた血液と被害者のDNA型が一致したことなどを挙げ、被告が犯人だと指摘。弁護側は、「事件の数時間前から玄関ドアなどが開いており、第三者による犯行の可能性がある」と反論
02/25 第2回公判 (被害者の長男の証人尋問)
男性は「過去にも弱い立場の人を殺害し今回も高齢の父を殺していて、人として許すことはできません。同じことが繰り返されることのないよう死刑を望みます」と述べた
02/28 第3回公判  
03/01 第4回公判  
03/02 第5回公判 (DNA鑑定の専門家の証人尋問) 専門家は「全く関係がない人とDNAの型が一致する確率はおよそ29兆分の1で、被告の靴底についた血液は被害者のものと一致したといえる」と証言
03/03 第6回公判 (被告人質問) 被告は検察官の問いかけに完全黙秘。弁護側は質問せず30分で終了
「裁判官や裁判員が聞いても答えることはないですか」との裁判長の問いにも、無言
03/04 第7回公判 (論告求刑、最終弁論、被告人の最終意見陳述) 検察側は被告に対して死刑を求刑
03/15 第8回公判 (判決) 東京地裁は、求刑通り死刑を言い渡し
 
控訴審 東京高裁(村瀬均裁判長)

事件番号:平成23年(う)第773号|傍聴券交付情報:東京高等裁判所
日付 摘要
2012 07/17 初公判 (冒頭陳述) 弁護側は「被告は犯人でない」として無罪を訴え、一審判決の破棄を求める
検察側は控訴棄却を主張
11/22 第2回公判 (被告人質問)
2013 02/07 第3回公判  
03/21 第4回公判 (弁論)
06/20 第5回公判 (判決) 東京高裁(村瀬均裁判長)は「一審は人の生命を奪った前科を重視し過ぎた誤りがある」と述べ、一審判決を破棄し、無期懲役を言い渡し
7月1日、検察側は二審判決を不服として最高裁に上告。7月3日、弁護側が上告。

上告審 最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)

 2015年2月4日、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は3日付で、検察、弁護側双方の上告を棄却する決定。無期懲役とした二審判決が確定。
更新日時:
2015年2月4日




被告の判決状況

氏名 罪名 第一審 控訴審 上告審
求刑 判決 裁判所・日付 判決 裁判所・日付 決定 裁判所・日付
伊能和夫 強盗殺人などの罪 求刑死刑 死刑 東京地裁
2011/3/15
一審破棄 無期懲役 東京高裁
2013/6/20
上告棄却 最高裁第2小法廷
2015/2/3
更新日時:
2015年2月4日



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