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求刑死刑で無期判決以下の事件

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広島夫婦殺害事件


事件概要

 2011年8月7日午前7時20分頃、中区江波二本松1の住宅で「両親が血まみれになって倒れている」と、近所に住む次男から110番通報を受ける。駆けつけた警察は、印刷会社役員、64歳男性と妻の61歳女性が2階の別々の部屋で背中などを刺されて死亡していたのを見つける。広島県警は殺人事件として広島中央署に捜査本部を設置した。

 11月3日、現場に残された足跡が、島根県警に詐欺容疑で逮捕された無職の24歳男の足跡と一致したことが分かる。同19日、広島県警広島中央署捜査本部は、殺人容疑で、住所不定、無職の24歳男を逮捕。身柄を広島に移送。同21日、容疑を強盗殺人に切り替え広島地検へ送検した。

 12月11日、広島地検は、「窃盗目的で侵入した」と判断し、24歳男を強盗殺人、住居侵入罪で広島地裁に起訴した。

 
遺体の状況
 ・夫妻の遺体には、背中や頭、腕などに複数の刺し傷や切り傷
 ・刺し傷は背中に集中(男性の方が多く刺される)
 ・頭などに鈍器で殴られたような打撲痕
 ・2人の腕には抵抗した際にできる切り傷
現場遺留物
 ・被害者の手の爪には、抵抗した際に付いた犯人のものとみられる皮膚片
 ・室内には複数の血の付いた足紋
 ・遺体のそばに1階台所の家庭用包丁
 ・室内に被害者の家族のものではないサンダルが1足
更新日時:
2011年12月12日




事件経過
日付 摘要
2011 08/07 午前7時20分頃、中区江波二本松の住宅で「両親が血まみれになって倒れている」と、近所に住む次男から110番通報
広島市中区江波二本松1のお好み焼き店兼住宅で、印刷会社役員、64歳男性と妻の61歳女性が背中などを刺されて死亡した状態で見つかる。2人は2階の別々の部屋で倒れていた
広島県警は殺人事件として広島中央署に捜査本部を設置
08/ 司法解剖の結果、2人の死亡推定時刻は、いずれも7日午前5時から6時頃、失血死と判明
09/ 不正に入手したクレジットカードを使用し、ゲーム機などをだまし取った疑いがあるとして、島根県警が詐欺容疑で24歳の男を逮捕
  松江地検益田支部は、24歳男を松江地裁益田支部に詐欺罪で起訴
10/07 広島県警は事件の情報提供を呼びかけるチラシを中区の商店街など17ヶ所の立て看板に設置
11/03 現場に残された足跡が、島根県警に詐欺容疑で逮捕された無職の24歳男の足跡と一致したことが分かる
11/10 松江地裁益田支部(坂本好司裁判長)で、詐欺罪に問われた24歳男の初公判
男は「間違いありません」と起訴事実を認める。検察側は、同種の詐欺などの罪で追起訴する方針を説明
11/19 広島県警広島中央署捜査本部は、殺人容疑で、住所不定、無職の24歳男を逮捕。身柄を広島に移送
11/21 広島中央署捜査本部は、無職の24歳容疑者を、容疑を強盗殺人に切り替え、広島地検に送検
12/11 殺人容疑で逮捕された24歳容疑者について、広島地検は、「窃盗目的で侵入した」と判断、強盗殺人、住居侵入罪で起訴
更新日時:
2011年12月12日




起訴状況

刑法

(強盗致死傷)
第二百四十条  強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

(詐欺)
第二百四十六条  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

(住居侵入等)
第百三十条  正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

罪名 該当法 法定刑 量刑例
強盗殺人罪 刑法第240条 死刑、無期懲役 強盗殺人罪の場合
詐欺罪 刑法第246条 10年以下の懲役
住居侵入罪 刑法第130条 3年以下の懲役、10万円以下の罰金

※ 死刑がやむを得ない場合求刑死刑に対しての判決例無期懲役仮釈放者の平均在所年数
更新日時:
2011年11月29日




公判関係

第一審 広島地裁(伊名波宏仁裁判長)

公判前整理手続き
日付 摘要
2012 03/26 第1回公判前整理手続き 「責任能力に疑問がある」として手続き開始前に鑑定実施を地裁に申請し、認められる
11/05 第6回公判前整理手続き 日程を1月28日に初公判、3月13日(予定)に判決と決める。弁護側は公判では、警察の調書の信用性が不十分で「被告が犯人と裏付ける証拠がない」として無罪を主張する方針
毎日新聞

公判
事件番号:平成23年(わ)第986号等|傍聴券交付情報:広島地方裁判所
日付 摘要
2013 01/28 初公判 (冒頭陳述、罪状認否) 被告は「覚えていません」と弱々しく繰り返し、弁護側は責任能力も含めて争う構えを見せる
02/04 第2回公判  
02/05 第3回公判 (証人尋問) 谷口さん方で血のついた足紋を発見した鑑識課の捜査員と、足紋を鑑定した職員が検察側の証人として出廷。捜査員は「階段2階の踊り場で足紋を発見した」と証言し、職員は「発見された足紋のうち、鑑定可能な2つが、いずれも竹中被告の右足のものと一致した」と述べた
02/06 第4回公判 (証人尋問) インターネットカフェの男性店員が証人尋問で、「手の平などに傷があり、ばんそうこうと包帯を手渡した」と証言
02/07 第5回公判  
02/12 第6回公判 (証人尋問) 谷口さんの次男が証人として出廷し「今でも続くはずだった家族との時間を返してほしい」と涙を流して訴え
02/13 第7回公判 (遺族の意見陳述) 忠男さんの母親が書面で意見陳述し、「どうしてあんなひどいことをしたのか。殺した理由を教えて下さい」と訴える
02/14 第8回公判 (証人尋問) 隣家の女性が証人出廷。事件があったとされる時間、谷口さん宅から「体が壁にぶつかるような激しく響く音が聞こえた」と証言
02/15 第9回公判 (証人尋問) 取り調べを担当した県警捜査員が証人出廷。弁護側は「(被告は)事件当時の記憶がないのに、自白調書が完成しているのはおかしい」と信用性を否定する主張を展開
02/18 第10回公判 (証拠調べ) 被告が昨年2月、取り調べをした捜査員に送った「自分がしてしまったことは一生かけても許されない」と記した手紙を、検察側から証拠提出
02/19 第11回公判 (証人尋問) 被告が11年、詐欺容疑で島根県警に逮捕された事件を担当した弁護士が証人出廷。被告が谷口さんの事件に関する取り調べを受けた際、刑事訴訟法などで保障された接見交通権の侵害があったなどと述べる
02/21 第12回公判 (証拠調べ、被告人質問) 被告の精神鑑定をした医師が結果を報告。被告に精神障害はないとする一方、事件当日の記憶の一部を失っている可能性を指摘。被告は被告人質問で、自白調書について「警察が話を作った」と述べる
02/22 第13回公判 (証人尋問) 医師は被告が「記憶にない」と繰り返し述べていることについて、重大なショックから記憶喪失となる「解離性健忘」の可能性が極めて高いと指摘
02/25 第14回公判 (証人尋問、被告人質問) 被告の元担当弁護士が証人出廷。検察側は、被告の元担当弁護士が、取り調べ前に供述拒否権の説明をしていたなどと指摘し、「取り調べが任意でされたことは疑う余地がない」と主張
02/26 第15回公判 (被告人質問) 裁判所は、捜査段階で事件への関与を認めたとされる竹中被告の供述調書を証拠採用
02/27 第16回公判 (遺族の意見陳述) 谷口さんの次男と長女が意見陳述。「命で償ってほしい」と、相次いで極刑を求める
02/28 第17回公判 (論告求刑、最終弁論、被告の最終意見陳述) 検察側は、現場に残された血の付いた足跡と被告の足紋が一致し、起訴されるまで犯行を一貫して認めていたなどと指摘。「金に困り強盗を決意した。罪と向き合う気持ちがなく、極刑はやむを得ない」などと述べ、死刑を求刑
弁護側は、「供述調書の任意性に疑いがある」などとして無罪を主張
03/13 第18回公判 (判決) 広島地裁(伊名波宏仁裁判長)は25歳被告に無期懲役(求刑死刑)を言い渡し
広島地裁は、強盗と殺人について計画性が認められないことや、更生の可能性がないとはいえないことを挙げ、死刑を回避
リンク:共同通信
2月26日予定の遺族の意見陳述を27日に、27日予定の論告求刑を28日に変更(最終弁論は当初から28日に予定)。
3月27日、検察側は判決を検討した結果、控訴審で一審の認定を覆すのは困難と判断し控訴を断念。同日、被告は判決を不服として控訴。
無期懲役仮釈放者の平均在所年数

控訴審 広島高裁(木口信之裁判長)
日付 摘要
2013 11/12 初公判 (冒頭陳述、被告人質問) 控訴した弁護側が改めて無罪を主張し、検察側は控訴棄却を求めて結審。被告人質問で、被告は「(事件のことは)覚えていない。分からない」と繰り返し、謝罪の言葉はなかった
2014 02/03 第2回公判 (判決) 裁判長は「取り調べで供述拒否権は適切に告げられていた」と指摘。一審判決を支持、被告の控訴を棄却
2014年2月14日、被告は判決を不服として上告

上告審 最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)

2014年9月17日付けで、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は、被告の上告を棄却する決定をした。
更新日時:
2014年9月19日




第一審 判決骨子

 ◇判決骨子◇
・現場に残された足跡は竹中被告と一致し、犯行時に現場に立ち入ったと認められる。
・起訴されるまで自分が犯人と認めており、供述の任意性、信用性は認められる。
・違法性を認識し合理的行動を取っており、責任能力に疑いはない。
・当初は窃盗目的で侵入し、強盗の計画性はない。
突発的な殺害で計画性はない
・公判で「記憶にない」などと述べ情状は良くないが、更生の可能性がないとは言えない
広島・夫婦殺害:無期懲役判決 遺族「納得いかない」 極刑巡り重い判断--地裁 /広島 (毎日新聞)

 死刑を適用しようとする際には、死刑適用基準にある要件も考え量刑を決められています。

 本件は主な罪が強盗殺人罪で被害死者が2名の事件で普通ならば死刑になる事件ですが、死刑適用基準の要件にある「殺人の計画性」がないと判断され、死刑が回避されていますし、実際の死刑求刑事件でも、確かに殺人計画性が希薄であるとか、計画性がない場合に死刑が回避されている事例が多く出ていますが、強盗殺人で2名殺害の場合は、控訴審で一審を破棄し、死刑判決になっている事例も複数あります。

 (法定刑に有期の規定もある)殺人罪と(死刑と無期の規定しかない)強盗殺人罪では罪の重さが極端に違いますが、死刑適用基準では、罪質として一つの要件になっています。殺人前科にしても然り。殺人前科が無くても、罪責が重ければ死刑もあり得ます。

 あくまで死刑適用基準の要件については、総合的に判断するものであって、全てを満たしていないから無期なんてことはあり得ません。

 これまで求刑死刑無期判決の場合は、検察側は控訴してきませんでしたが、本件は殺人計画性以外についての要件は罪質、結果の重大性、犯行態様、遺族の処罰感情、犯行後の情状、犯行後の反省など、あまり良くありませんので、無期判決でいいのか?と、一度高裁の判断を仰いでみるのもいいのではないかと思います。
更新日時:
2013年3月15日




検察は控訴断念、被告は控訴

 控訴期限である3月27日に被告は控訴しましたが、検察側が控訴を断念したため、法の規定により死刑以外の判決が確定しました。

刑事訴訟法

第四百二条  被告人が控訴をし、又は被告人のため控訴をした事件については、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。

 本件は求刑死刑で無期判決ですが、同じ無期刑でも限りなく死刑に近い無期刑で、仮釈放の運用が非常に慎重になる(俗に言う)マル特無期に分類されます。

 マル特無期の場合、現状の運用状況では、30年目、40年目以降(30年目の審査終了から10年後に審査開始なので実際には41、2年目に審査開始になり、審査結果はその1、2年後の服役42年〜44年後になります)の審査での仮釈放はまず無理で50年以上服役以降に仮釈放の可能性があると思っていた方が無難です。50年目以降の審査も、同様に前回審査終了後10年経過した後なので、前回の42年〜44年から10年経過した時に審査開始で結果が出るまでに同様に1、2年要します。よって、結果が出るのは53年〜56年頃になります。なので、被告が40歳以上の場合には、確定時に40歳でも、40+53=93と、死亡している可能性が非常に高く、無期確定=獄死コースとなってしまう無期刑になります。

 本件の被告は現時点で25歳と若いのですが、仮に53年服役しても78歳で、男性の平均寿命をわずかに下回っている状態です。被告は控訴したので、現時点で無期判決は確定していません。無期確定が遅くなればなるほど平均寿命に近づき、または、平均寿命を超え、被告獄死の可能性が高くなります。
更新日時:
2013年3月30日




被告の判決状況

氏名 罪名 第一審 控訴審 上告審
求刑 判決 裁判所・日付 判決 裁判所・日付 判決 裁判所・日付
竹中誠司 強盗殺人などの罪 求刑死刑 無期懲役 広島地裁
2013/3/13
控訴棄却 広島高裁
2014/2/3
上告棄却 最高裁第2小法廷
2014/9/17
更新日時:
2014年9月19日



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