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死刑判決の事件

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宮崎家族3人殺害事件


事件概要

 2010年3月1日夜、「帰宅したら妻と義母が死んでいた」と110番通報。午後9時半すぎ、110番で駆け付けた警察官が、宮崎市花ケ島町の24歳主婦と、その母の50歳女性が自宅で頭から血を流して死亡しているのを発見。生後6ヶ月の男児が行方不明に。

 翌2日、110番通報した男児の父親が、事情聴取に対して、男児の遺体を捨てたことを認め、生後6ヶ月の男児の遺体を、自宅から約600メートル離れた資材置き場で発見。宮崎北署は父親の22歳会社員の男を死体遺棄容疑で逮捕した。

 3月23日、宮崎県警は、生後6ヶ月の長男を殺害したとして、22歳元会社員を殺人容疑で再逮捕。4月13日、県警捜査1課と宮崎北署は、同居していた妻と義母を殺害したとして、22歳元会社員を殺人容疑で再逮捕した。
更新日時:
2010年11月03日




起訴状況

刑法

(殺人)
第百九十九条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

(死体損壊等)
第百九十条  死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

罪名 該当法 法定刑 量刑例
殺人罪 刑法第199条 死刑、無期、5年以上の懲役 殺人罪の場合
死体遺棄罪 刑法第190条 3年以下の懲役

※ 死刑がやむを得ない場合死刑執行方法
更新日時:
2010年11月03日




時系列
日付 摘要
2010 03/01 夜、「帰宅したら妻と義母が死んでいた」と110番通報
午後9時半すぎ、110番で駆け付けた警察官が、宮崎市花ケ島町の24歳主婦と、その母の50歳女性が自宅で頭から血を流して死亡しているのを発見。生後6ヶ月の男児が行方不明
03/02 110番通報した男児の父親が、事情聴取に対して、男児の遺体を捨てたことを認める
生後6ヶ月の男児の遺体を、自宅から約600メートル離れた資材置き場で発見
1日午後9時頃、自宅から約600メートル離れた資材置き場に長男の遺体を遺棄したとして、宮崎北署は父親の22歳会社員の男を死体遺棄容疑で逮捕
03/03 宮崎北署は、死体遺棄容疑で22歳会社員を宮崎地検に送検
03/23 宮崎県警は、生後6ヶ月の長男を殺害したとして、22歳元会社員を殺人容疑で再逮捕
04/13 宮崎地検は、生後6ヶ月の長男に対する殺人、死体遺棄罪で22歳元会社員を起訴
県警捜査1課と宮崎北署は、同居していた妻と義母を殺害したとして、22歳元会社員を殺人容疑で再逮捕
04/30 宮崎地検は、妻と義母に対する殺人罪で22歳元会社員を追起訴
09/13 公判前整理手続き 初公判を11月17日に指定(判決、12月7日)
11/04 公判前整理手続き 公判期日を決定
証人尋問では、検察側は3人、弁護側は2人を証人として出廷させる方針
11/17 第一審 初公判
11/25 第一審 論告求刑公判 検察側は被告に対して死刑を求刑
12/07 第一審 判決公判 宮崎地裁(高原正良裁判長)は被告に対して、求刑通り死刑を言い渡し
12/17 弁護側は判決を不服として控訴
2011 05/19 控訴審 初公判
2012 01/19 控訴審 弁論
03/22 控訴審 判決 福岡高裁宮崎支部(榎本巧裁判長)は一審判決を支持し、弁護側の控訴を棄却
04/05 被告の弁護団が、求刑通り死刑とした1審判決を支持した福岡高裁宮崎支部判決を不服として上告
2014 09/08 上告審 口頭弁論
10/16 上告審 判決 最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は、被告の上告を棄却
11/07 最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は、判決訂正申し立てを棄却する決定 死刑確定
更新日時:
2014年11月9日




公判関係

第一審 宮崎地裁(高原正良裁判長) 裁判員裁判


事件番号:平成22年(わ)第70号等

2010年11月6日、裁判員選任手続き 裁判員6人と、欠員に備える補充裁判員4人を選任
日付 摘要
2010 11/17 初公判 (検察・弁護側:冒頭陳述、証拠調べ) 被告は起訴事実を認める。争点は量刑
 検察側が遺体の写真や凶器を証拠として提出し、裁判員に示した。わずか15分間の凶行
11/18 第2回公判 (検察側証人の鑑定医ら3人の証人尋問)
 遺体を解剖した鑑定医は、妻と義母の死因となった脳挫滅について、「脳の形が崩れる状態。これまでの経験では、交通、転落事故などでしか見たことがない」と証言。
11/19 第3回公判 (弁護側証人2人の証人尋問、被告人質問) 動機に情状酌量を訴え
11/22 第4回公判 (弁護側による被告人質問)
 被告は、殺害を決意したのが事件の4日前だったことなど、事件のいきさつを公判で初めて話す。当初は3人の遺体を埋めて、失踪に見せ掛けるつもりが「重機で穴がうまく掘れなかったため、強盗に見せ掛けようとした」と話した。遺族らに謝罪し、「どのような刑でも受け入れる」と述べた。
11/24 第5回公判 (検察官・裁判員らによる被告人質問、被害者参加制度を利用した遺族の意見陳述)
 「義母から逃れるために(事件を)考えたのか」と訪ねられた被告は「そうです。最悪な考えに行ってしまいました」。「今考えても理解しがたい行動で、分からない」と答えた。
11/25 第6回公判 (被告人質問、被害者遺族の意見陳述)
 被害者遺族(妻の弟)は「とても犯人が憎いです。殺された3人は痛くて苦しかっただろうと思う。3人を殺したのだから死をもって償うべき。父、おじ、祖母みんな死刑を望んでいます」と述べた。
(検察側:論告求刑、弁護側:最終弁論、被告人の最終陳述)
 検察側は、被告に対して死刑を求刑
12/07 第7回公判 (判決) 宮崎地裁(高原正良裁判長)は、「自由で1人になりたいと考え、家族3人を殺害した自己中心的な犯行」と指摘。犯行の計画性も認めた上で「冷酷、残虐だ」と述べ、求刑通り死刑の判決を言い渡し
2010年12月17日、弁護側は、判決を不服として福岡高裁宮崎支部に控訴
 
控訴審 福岡高裁宮崎支部(榎本巧裁判長)

事件番号:平成23年(う)第3号|傍聴券交付情報;福岡高等裁判所
日付 摘要
2011 05/19 初公判 (冒頭陳述、証拠調べ) 弁護側は「一審判決は、被告に更生可能性があることを認めている」と無期懲役を主張。検察側は控訴棄却を求める。23歳被告は涙ながらに殺害した家族への思いを述べる
11/10 第2回公判 (証人尋問) 被告の心理鑑定をした臨床心理士2人の証人尋問
2012 01/19 第3回公判 (弁論) 弁護側は、動機について「自由のために邪魔だったからではなく、精神的に疲弊し、自己の存在を脅かされる状況から逃れるためだった」と主張
 検察側は「反省の深化はなく、更生可能性が極めて乏しい」として、控訴棄却を求める
03/22 第4回公判 (判決) 福岡高裁宮崎支部は、「一審に量刑を左右する不合理な点はない」と述べ、無期懲役への刑の軽減を求めた弁護側控訴を棄却
弁護側が、専門家に心理鑑定を依頼。弁護側からの要請を受け、第2回公判期日を7月14日から11月10日に延期
2012年4月5日、被告の弁護団が、求刑通り死刑とした1審判決を支持した福岡高裁宮崎支部判決を不服として上告

【宮崎市の家族3人殺害事件】傍聴席から見えなかったもの(共同通信)
 「義母から逃れたかった」 被告が明かした犯行動機 3回続きの(上) 2012/07/13
 我慢ばかりで本音言えない コントロール超えた衝動 3回続きの(中) 2012/07/21
 短い審理、息苦しい法廷 「思いが伝え切れず」 3回続きの(下) 2012/08/09
 
上告審 最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)

※ 最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は7月4日までに、奥本章寛被告(26)の上告審弁論を9月8日に開くことを決めた。
日付 摘要
2014 09/08 (口頭弁論) 弁護側は審理差し戻しか、極刑判断を回避するよう求め、結審。弁護側は差し戻しを求める理由について「被告は裁判員裁判で動機をうまく説明できておらず、解明は十分ではない」と述べる
10/16 (判決) 第1小法廷は、説教や叱責を繰り返す義母との同居生活から逃れたかったなどとした動機は、短絡的で身勝手だと批判。「長男の首を両手で絞めて瀕死の状態にした上で、浴槽の水中に沈めて窒息死させるなど、強固な殺意に基づく残虐な犯行だ」と指摘し、被告の上告を棄却
2014年11月7日、最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は、判決訂正申し立てを棄却する決定。死刑確定
更新日時:
2014年11月9日




死刑の可能性(死刑適用基準での考察)

 本件の場合、通常なら量刑が軽い家族間での殺人事件なのに、第一審から死刑が選択されていることで、ネット上で疑問に思われている方のコメントを散見しました。

 私は、3人に対しての殺人罪で起訴された後に、検察求刑で死刑の可能性がある事件としてこのページを作りましたが、どういう理由で検察求刑で死刑の可能性があると思ったのか・・・ 参考までに、死刑に関してのページの死刑適用基準で紹介した以下の12項目の要件を本件に当てはめて書いてみます。ちなみに、どういう場合に各要件を満たすのかを死刑がやむを得ない場合のページに書いてあります。

要件 該当
1 犯罪の性質

 義母に対しては恨みによる殺人ですが、妻と長男に対しては理由なき殺人で無差別殺人と同じになります。無差別殺人は罪として同じ殺人罪に問われていても罪質としては悪質な方になります。
2 殺人の計画性

 殺害を決意したのが事件の4日前と第一審公判で被告自ら話しています。衝動的な殺人とは違い、数日前から殺害を計画していることから、殺人計画性はかなり強固だったとなります。
3 犯罪の主導性

 単独犯なので主導性はあります。
4 犯行の動機及び動機への情状

 
義母に対する恨みから義母を殺害していますが、妻や長男については、理由なき殺人となります。一人については怨恨ということで多少なりとも酌むべき事情があったとしても、残る2人については殺されるいわれが無い状態で殺害されているため、無差別殺人と同等になります。

 被害者2人が無差別殺人と同じであれば、犯行の動機に酌むべき事情はありません。
5 犯行態様、特に殺害方法の執拗性、残虐性

 妻と義母は脳の形が崩れ、挫滅する状態になるほど頭部を殴打しています。犯行態様などから、強い執拗性、残虐性が伺えます。
6 結果の重大性、特に殺害された被害者数

 
24歳の妻、50歳の義母、生後6ヶ月の長男の3人が殺害されています。被害死者が3人と複数で結果は重大です。
7 遺族の被害感情

 
被告の勝手で突然殺されたのですから、言うまでも無く、遺族の被害感情は峻烈になります。
8 社会的影響

 
家族と言えども、妻と義母は、離婚すれば他人に戻る姻族です。被告と被害者の間に血縁関係は無く、公共性が高くなります。第三者の誰もが被害に遭う可能性があり、社会的影響は大です。
9 犯人の年齢

 
事件日翌日の逮捕時で22歳。18歳以上ですから死刑適用は問題ありません。
10 殺人の前科

 
この要件は、無期懲役仮釈放中の犯行で1人殺害など、直近の事件での被害死者は1人でも、通算すると複数死者になる場合など、被害死者が1人の場合で前科がある場合に考慮する項目です。

 本件は、複数殺人のため、この要件を考慮する必要はありません。
11 犯行後の情状

 
自ら110番通報していますが、長男を別の場所に遺棄してから、「帰宅したら妻と義母が死んでいた」と自分が知らない間に殺されたように偽装工作をしています。犯行後の情状としては悪いです。
12 犯行後の反省

 
第一審で遺族らに謝罪し、「どのような刑でも受け入れる」と述べていますが、死刑判決が出たら控訴、上告しています。言行不一致のため、本当に心から反省しているのか不明です。

 通常、家族間の殺人は量刑が軽くなる場合が多いのですが、それは、被害者遺族と加害者遺族が同じになるとか、血族間で第三者に害が及ぶ可能性が少ない例が多くあるからです。ただし、同じ家族間と言っても、血族である親子間と姻族である夫婦間では、姻族の夫婦間での量刑の方が重くなっています。

 親子、兄弟など親族間での殺人事件 判例夫婦、恋人等、交際関係にあった仲での殺人事件 判例

 本件の場合は、妻と義母が離婚すれば他人になる姻族で、血族になる長男は抵抗する術を知らない生後6ヶ月の幼児と、被害者3人が同じ家族間でも量刑が重くなる場合の組み合わせになっています。

 また、理由なき殺人の被害死者が2人、殺人計画性が強固、殺害方法が残虐かつ執拗、義母に対しては多少の動機に酌むべき事情があったとしても、妻と長男についての動機には酌むべき事情がないなどと、上記の死刑適用基準の要件を満たしてしまっています。

 ちなみに、家族間の殺人事件では、上記の適用基準の要件のいくつかを満たさず、仮に被害死者が多くても死刑ではなく無期懲役になっている場合が過去には数例あります。

 通常であれば量刑が軽くなる家族間ですが、本件は加害者と被害者の関係が量刑が重くなる場合の家族間ですし、このように死刑適用基準の要件も満たしています。よって、量刑に死刑が選択されてもやむを得ない事件と判断し、検察求刑で死刑の可能性がある事件のページとして作りました。
更新: 2014年9月10日



被告の判決状況

氏名 罪名 第一審 控訴審 上告審
求刑 判決 裁判所・日付 判決 裁判所・日付 判決 裁判所・日付
奥本章寛 殺人などの罪 求刑死刑 死刑 宮崎地裁
2010/12/7
控訴棄却 福岡高裁宮崎支部
2012/3/22
上告棄却 最高裁第1小法廷
2014/10/16
更新日時:
2014年10月16日



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