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性犯罪事件

殺人事件、裁判員裁判、性犯罪のコンテンツで扱っている事件の一覧

オリンピック柔道金メダリストの準強姦事件


準強姦事件の概要

 2011年12月6日、警視庁捜査1課は、同年9月19日に女子柔道部のコーチを務めていた九州看護福祉大(熊本県玉名市)の遠征先の都内で10代の女子部員に酒を飲ませ、深夜から未明にかけて、寝込んだところを乱暴した疑いがあるとして、アテネ、北京両五輪の男子柔道金メダリストで九州看護福祉大の元客員教授の33歳容疑者を準強姦容疑で逮捕。8日朝、東京地検へ送検した。警視庁捜査1課によると、容疑者は「納得できない。合意の上だった」などと一貫して容疑を否認している。

 12月27日、同年9月20日未明に、合宿先の東京都八王子市内のホテルで酔って寝込んでいた当時未成年の女子柔道部員に暴行したとして、東京地検は33歳容疑者を準強姦罪で東京地裁へ起訴した。
更新日時:
2011年12月27日




時系列
日付 摘要
2011年 9月19日 九州看護福祉大(熊本県玉名市)女子柔道部は東京都内で遠征合宿中
夜、部員らと7人でホテル近くのカラオケ店を訪れ飲酒。部員ら数人と数時間にわたり飲酒
女子部員は1人で歩けないほど泥酔。泥酔した女子部員を背負うなどして2人きりで先にホテルへ戻る
9月下旬 客員教授がセクハラ行為をしたとの情報が学内のセクハラ防止対策委員会に届く
10月初旬 九州看護福祉大は調査委員会を設置
11月29日 九州看護福祉大は、女子柔道部コーチの33歳客員教授を懲戒解雇処分
12月6日 警視庁捜査1課は、準強姦容疑で33歳男を逮捕
夜、取り調べを受けていた警視庁本部から原宿署へ身柄を移送
警視庁捜査1課は、容疑を裏付けるため、玉名市内の容疑者の自宅を家宅捜索
12月8日 朝、警視庁捜査1課は、容疑者を準強姦容疑で東京地検へ送検
容疑者は「納得できない。合意の上だった」などと一貫して容疑を否認
東京地裁は、17日までの10日間の勾留を決定 (延長した場合、再度10日間で27日まで勾留可能)
12月27日 東京地検は33歳容疑者を準強姦罪で東京地裁へ起訴
12月28日 33歳被告側が、東京地裁に保釈請求
12月29日 東京地裁は、33歳被告の保釈請求を却下
2012年 9月12日 第一審 初公判
2013年 2月1日 第一審 判決公判 東京地裁(鬼沢友直裁判長)は被告に対して求刑通り懲役5年を言い渡し
弁護側は判決を不服として即日控訴
10月4日 控訴審 初公判
12月11日 控訴審 判決公判 東京高裁(金谷暁裁判長)は一審判決を支持し、弁護側控訴を棄却
弁護側は判決を不服として即日上告
2014年 4月23日 上告審 最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は被告の上告を棄却する決定
リンク:共同通信
更新日時:
2014年4月28日




参考法規

刑法

(強姦)
第177条 暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

(準強姦)
第178条第2項 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。

(親告罪)
第180条 第176条から第178条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

該当法 法定刑 量刑例
準強姦罪 刑法第178条第2項 3年以上の有期懲役 強姦、準強姦罪の場合

2005/6/22〜2011/11/8(No.001〜No.1000)のデータを元にグラフを作成 量刑の傾向 強姦、準強姦罪の場合

 強姦や準強姦罪の法定刑は3年以上の有期懲役ですが、グラフには無期懲役が1人入っています。この無期懲役の1人は殺人と強姦などの罪での量刑で、主罪は法定刑に死刑や無期懲役の規定がある殺人罪になります。

 強姦や準強姦罪には無期以上の刑の規定がありませんから、強姦、準強姦罪が主罪になる場合にどの程度の量刑になるかを考慮する際には、この無期懲役の1人を除外します。

 無期懲役の1人を除外すると全部で116人に。その中から無罪8人、執行猶予付7人を差し引くと101人が実刑判決になります。

 判決が記事になった事例の中でですが、割合としては、116人中101人が実刑判決で、実刑判決率は87%になっています。
更新日時:
2011年12月08日




準強姦罪について

準強姦罪の「心神喪失」と「抗拒不能」

 心神喪失とは、熟睡、泥酔、精神病、精神薄弱、知的障害、催眠、薬漬け状態など、精神または意識の障害によって,性的行為について正常な判断ができない状態にあることを言います。

 また、抗拒不能とは、心神喪失以外で、心理的、物理的に抵抗ができない状態、または抵抗するのが著しく困難な状態にあることを言います。

 本件では、容疑者が「合意の上だった」と、姦淫した事実を認めています。よって、被害者が当時「心神喪失」又は「抗拒不能」の状態であったことを検察が立証できれば、(合意の有無に関わらず)準強姦罪は成立します。

 本件は、数人で一緒に飲酒し、いろいろな店に寄っていたため、女子部員が自力で歩行が不可能なくらい泥酔状態であったことを、第三者の証言や防犯カメラの映像などから立証可能な状態になってしまっているように感じます。


強姦罪の「暴行又は脅迫を用いて」を否定するための「合意の上」

 容疑者は「合意の上だった」と主張し否認していますが・・・ 「合意の上だった」と主張するのは、準強姦罪ではなく、強姦罪の場合です。

 罪不成立で無罪とするために一番手っ取り早いのが、罪の構成要件を満たさなくすることです。強姦罪の条文は「暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者」となっています。この条文を満たさなければ罪にはなりません。

 もし、この条文中で、姦淫したのが事実であるならば、「暴行又は脅迫を用いて」の部分しか争点にならないのですが、ここを否定できなければ罪が成立します。

 この「暴行又は脅迫を用いて」を分かりやすく言うと「無理やり」になります。無理やり姦淫すれば強姦罪になるが、合意の上での姦淫なら当然の事ながら罪にならない。なので、強姦罪の場合は、「暴行又は脅迫を用いて」を否定するために、「合意の上」を主張するわけです。


 準強姦容疑なのに、強姦容疑の「合意の上」をいくら主張してもね。。。

 返って、「合意の上だった」と主張することで、姦淫の事実があったことを自分から認めてしまっています。

 なので、捜査の結果、女子部員が心神喪失や抗拒不能であったと立証できる証拠が揃えば、準強姦罪は成立してしまいます。また、いくら否認していても罪が成立すれば有罪ですし、場合によっては、否認し続けることによって量刑が重くなる場合もあります。

 準強姦罪と強姦罪は、準の文字が付くか、付かないかの違いですが、2つの罪の構成要件は全く違います。
更新日時:
2011年12月08日




本件で気になった事

 私のHPには性犯罪など犯罪に関するコンテンツがあるため、以前は、被害者側だけでなく加害者側からも、犯罪についての多くの相談メールが届いていました。

 あまりに相談メールが多かったため、誰でも見れるように「もし性犯罪被害に遭われたら・・・」というページを設け、被害者となった場合、嵌められて加害者となった場合、誤認逮捕された場合など、被害者と想定できるいろいろな場合について対処法をざっくりとですが書いておきました。

 被害に遭われた場合を想定していますので、加害者になった場合を書いていないのですが、私のコンテンツは基本的に犯罪者になってしまわないよう注意喚起で作っていますので、性犯罪のコンテンツ全体に「加害者にならないように・・・」という想いが入っています。ちなみに、性犯罪のコンテンツの入り口のページに、以下のように書いてあります。

 「これくらいはいいだろう」と安易な気持ちでしたことや、己の欲望を満たすために相手の人格を無視した行動によって、どういう罪になり、罰があるかということを知ってもらいたく、性犯罪に関する 容疑、判例、懲戒処分などのデータを集めてきました。

 公務員や地位、名声がある人は、実名公表の対象になりやすいですから、罪が確定していなくて、容疑を掛けられただけでも、人生のやり直しを余儀なくされます。そうなってしまわないように、くれぐれも、ご注意ください。

 読まれた方は、こういう状況にならないよう、注意されると思いますが・・・

 もし、加害者になった(なってしまった)場合に、まず、すべきことは、自分を正当化するための言い訳ではなく、相手に対する誠心誠意の謝罪です。

 これは、性犯罪に限らず、いろいろな犯罪にも言えることなのですが、自分は謝ったつもりでも、相手が許すという気持ちにならなければ、謝罪になっていません。相手に自分の謝っている気持ちが通じて初めて謝罪になります。

 それを本件では、どうみてもしていない。

 「メールで謝った」という記事を見かけましたが、メールなんてのは、心で「あっかんべー」していても、何とでも書けます。自分の将来がかかっている大事には、気持ちが伝わりやすい手書きで謝罪文を書くものです。

 被害者へは謝罪のメール。他方には「合意の上だった」と自分を正当化するメール。本当は、いったいどっちの気持ちなの?と普通なら、相手の事を疑いますよ。

 こんなことをしていては、こじれていくのが当たり前です。

 示談金(金)目当てとか書いているブログなどもありましたので、参考までに書いておきますが、今は、(準)強制わいせつ、(準)強姦などは、刑事裁判とは別に民事で損害賠償請求訴訟をするまでもなく、2000円払えば附帯私訴で刑事裁判の判決が出た後に、その裁判で使った証拠などを元に損害賠償額も決めてくれるようになっています。

 なので、相手の罪を問いたいと、(親告罪の場合)告訴すれば、被害を受けた側は、相手が逮捕、送検、起訴されていくのを待つだけで、起訴前に示談する必要が全く無いのです。判決が有罪となれば、払った2000円の手数料で、その行為に対しての損害賠償額を決めてくれるシステムになっています。

 強姦した側(加害者側)にとっては、非常に示談しづらい法体制(環境)になっていますので、告訴に至らないよう、逮捕に至らないよう、起訴に至らないよう、その前での誠心誠意の謝罪が重要になります。

 逮捕されるまで2ヶ月半程時間がありましたので、本件にも、何度か、そういう謝罪の機会があったと思いますが・・・ こうして逮捕、送検に至っています。

 記事等で容疑者の言動等が出ていますが、それらを読むと、容疑者自身で回避する機会を潰してしまったように感じます。
更新日時:
2011年12月13日




公判関係

第一審 東京地裁(鬼沢友直裁判長)

事件番号:平成23年合(わ)第293号|傍聴券交付情報:東京地方裁判所
日付 摘要
2012 09/12 初公判 (冒頭陳述、証拠調べ) 被告は「(女性が)間違いなく起きており、合意の上で性行為に及んだ」として起訴内容を否認、無罪を主張
11/02 第2回公判 (証拠調べ) 少女の尋問調書の概要を法廷で読み上げ
11/26 第3回公判 (証人尋問) 被告の同僚のコーチが証人出廷。被告から「『口裏あわせでも、ウソでも使って庇ってほしかった』というメールが送られてきた」などと証言
11/27 第4回公判 (証人尋問) カラオケ店で同席していた被告の大学の後輩にあたる警察官が検察側証人として出廷。
11/28 第5回公判 (被告人質問) 被告は隣室の別の女子部員との性行為も認める
11/29 第6回公判 (被告人質問) 被告は不倫関係の愛人と同じ合宿中に性行為をしたことを告白
12/26 第7回公判 (論告求刑) 検察側は被告に対して懲役5年を求刑
12/27 第8回公判 (最終弁論) 「女子部員は行為に同意していた」とあらためて無罪を主張
2013 02/01 第9回公判 (判決) 鬼沢友直裁判長は「責任は極めて重い」として、求刑通り懲役5年を言い渡し
※被告側は判決を不服として即日控訴

控訴審 東京高裁第3刑事部(金谷暁裁判長)

事件番号:平成25年(う)第457号|傍聴券交付情報:東京高等裁判所
日付 摘要
2013 10/04 初公判 (冒頭陳述) 弁護側は「合意の上だった」と改めて無罪を主張し被告人質問などを求めたが、高裁は採用せず、即日結審
12/11 第2回公判 (判決) 東京高裁は一審判決を支持し、弁護側控訴を棄却
※弁護側は判決を不服として即日上告

上告審 最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)

最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は、2014年4月23日付で被告の上告を棄却する決定を出した。
更新日時:
2014年4月28日




懲戒解雇、賞取消し処分
日付 摘要
2011年 11月29日 九州看護福祉大は、女子柔道部コーチの33歳客員教授を懲戒解雇処分
12月8日 午後、熊本県知事は、容疑者の県民栄誉賞を取り消したと発表
12月10日 全日本柔道連盟(全柔連)が調査委員会を設置。第1回会合を開催
12月12日 宮崎県延岡市は、JR延岡駅前の広場に設置した容疑者の手形モニュメントの撤去を決定
12月13日 熊本県阿蘇市は、容疑者に授与した市民栄誉賞を取り消すと発表
12月16日 熊本県合志市は、容疑者の名誉市民の称号と市民栄誉賞を取り消し。記念石碑を撤去
12月27日 全日本柔道連盟(全柔連)は、容疑者の指導者登録を停止
2013年 2月5日 全日本柔道連盟は、東京文京区の講道館で臨時理事会を開き、被告の会員登録を、永久に停止することを全会一致で決定
 
検討

 全柔連の会員登録抹消:容疑者 史上初の汚点も 黒帯そのものもはく奪か - スポニチアネックス(2011年12月7日)

 紫綬褒章:容疑者「紫綬褒章」の行方 実刑確定なら「はく奪」 - J-CASTニュース(2011年12月8日)
更新日時:
2013年2月5日




被告の判決状況

氏名 罪名 第一審 控訴審 上告審
求刑 判決 裁判所・日付 判決 裁判所・日付 決定 裁判所・日付
M.U. 準強姦罪 求刑懲役5年 懲役5年 東京地裁
2013/2/1
控訴棄却 東京高裁
2013/12/11
上告棄却 最高裁第2小法廷
2014/4/23
更新日時:
2014年4月28日



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性犯罪について 性犯罪行為での罪と罰 性犯罪での事件裁判について 性犯罪が起訴事実に含まれている殺人事件 性犯罪 量刑の傾向
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