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建物を作る(設計する)上に於いて、まず考えることは・・・ | 欧米と日本の建物事情の違い |
愛知の県都、名古屋駅前の開発(再開発)状況 | 自宅を自分で改修してみました。 |
まさかりの独り言 | 街づくり、建築等関係法令 |
欧米と日本の建物事情の違い |
先だってゲストブックに建築に関しての疑問点が書いてある投稿がありました。該当部分を抜粋しましたが、以下のようになります。 | ||
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簡単に言うと、欧米と日本の住宅(建物)事情の違いについでですが、何故このようなことが起きるのかを、考えられることを挙げてみます。 |
地震が起きやすい地域と起きにくい地域の違い |
建物に対する日本での税制 |
土地(建物)に対する考え方の違い |
湿気、結露について |
後に地域の財産になるよう願い、作った建物 |
コストは、イニシャルコストとランニングコストの合計で・・・ |
地震が起きやすい地域と起きにくい地域の違い |
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皆さんがご存知のように日本という国は、地震が頻繁に起きる国です。 地球は大きな13枚のプレートで表面を構成しているのですが、地震というのは、それらの継ぎ目部分で発生しやすくなっています。 日本列島は、ユーラシアプレート、北アメリカプレート、フィリピン海プレート、そして少し離れた位置に太平洋プレートと、4つのプレートの継ぎ目部分に存在していますから、地震が発生しても何の不思議がない場所になります。 それに対して、アメリカは北アメリカプレートの上、ヨーロッパは、ユーラシアプレートの上に、乗っている状態で、継ぎ目の位置と離れていますので、殆ど地震が起きることはありません。 大きな地震が起きれば、言うまでもなく建物が揺れます。建物が揺れに対して耐え切れなければ、何らかの被害を受けてしまいます。 地震が起きる地域では、地震によっては、壊れてしまう場合もありますので、地震に耐えうる建物を作る必要がありますし、建物が倒壊しないまでも、揺れが頻繁に起きれば、当然影響を受け、最初は真っ直ぐに作った建物でも、傾いてしまう場合がありますので、建物を耐震、若しくは免震で作る必要があります。 例えば、いくら表面上見える部分が、頑丈に作ってあり、建物としての形体を保っていたとしても、その建物を作る際に、杭工事の重要性を軽く見て、費用をケチったりして、確実に支持地盤の上に乗っていないような状態で作ってあれば、大きな揺れによって、そのままの形で傾いてしまいます。 傾きが多少ならば、そのままの状態で住むことも出来ますが、大きく傾けば、当然住むのが困難になりますし、傾きを直すためには、基礎の下の杭からやり直さない限り直りませんから、取り壊して、新たに建て直す必要があります。 地盤が軟らかく、支持地盤が深い位置にある場合には、杭を何百mも入れなくてはいけない場合もあり、作る建物によっては、基礎から下の部分の工事の方が、建物本体にかかる費用より高くなる場合もあります。 地震に対して強い建物を作ろうとすると、どうしても地杭、基礎、躯体など構造部分に、大きく費用をかける必要がありますが、地中であるとか壁の中であるとかで、中に隠れてしまうために、表面上は見えません。 それらの見えない部分にしても、新築当初は建てたばかりですから、分かりませんが、長い年月を経過していく間に、地震や台風などの自然災害を数回経験していますから、もし見えない部分に費用がかけていないと何らかの形で建物に影響を与えますから、目に見える状態で分かってきます。 建物を建てる場合には、大抵の方が建てるにあたっての予算というものがあり、その予算内で作ることになりますが、地震が起きやすい地域ということで、少なくとも予算内で杭や躯体が、地震に耐えうるように作っておく必要があります。 予算は変わらないので、杭や基礎、構造に費用がかさめば、それ以外の部分にしわ寄せがいきます。 人は、好みもありますが、外観や内装など見える部分も、それなりに耐久力がある材料を使い、尚且つ魅力がある建物でなければ使おうとは思いませんから、第三者に売却でなくても、代替わりで、建て替えが発生する場合もあります。 それに対して地震が起きない地域で建物を建てる場合には、そういう対策を考えなくても済みますから、長い年数に耐えれるように考え、建物を作っておけば、建て替えを建物自体が老朽化した場合に考えるだけで済みます。 ちなみに、ヨーロッパは地震が殆ど無いですから、一度建てれば、長い期間壊れないで建物が残っていますので、建て替え需要も少ないですし、新たに建てるにしても、耐震のために余分な費用をかける必要もありません。 |
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建物に対する日本での税制 |
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日本では、土地や建物を所有すると、固定資産税や都市計画税を納付する義務が生じます。 土地は、土地の評価に対して一定率をかけ、減額した数字に対してですが、建物の場合は、有形原価償却資産として、建物の構造や用途などで耐用年数が定めてあり、固定資産税の評価額が年々下がりますので、その評価額を元にして算出される固定資産税額も同じように下がっていきます。 同じ建物でも構造、用途によって法定耐用年数が違います。 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 から建物に関するのを抜き出してみました。
例えば、同じSRC造であっても、事務所用と冷蔵倉庫用とでは、使用目的が違うのですから、建物に与える影響も違うので、耐用年数が違ってもおかしくないのですが、50年と21年というように、用途によっては、大きく差があります。 減価償却をする場合の方法として、以前は定率法があったので、限りなくゼロに近い数字になっていましたが、現在は、新たに取得した物については定額法を使いますので、定額法を使えば、耐用年数を経過するとゼロになります。 いくら固定資産税の1000分の14という税率が存在していても、耐用年数分減価償却すると、償却してしまいゼロになります。 建物の固定資産税評価額も法定耐用年数に応じて減価償却した金額に対して、評価額を定めていきますから、ゼロになったら、どんな数字をかけてもゼロですので、それに対する税金も発生しようがありません。ちなみに1000分の3の都市計画税も同様です。 日本は法令上、耐用年数が過ぎると、資産価値が無くなるようになっています。 事業用にその建物を使用していれば、毎年(毎月)の利益から減価償却費として経費で落とせますから、利益を出している企業にしてみたら、古くなって使い勝手が悪く、経費として落とせないような建物よりも、使い勝手の良い建物に新築して、かかった費用を耐用年数分毎年経費として落としていった方が、経費は増えますが、利益が減り、それにかかる法人税額が減りますから、企業にとって良くなります。 税額を減らすための合法的な方法なのですが、それによって、スクラップ&ビルドが発生しますので、古い建物が残りにくくなります。 |
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土地(建物)に対する考え方の違い |
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日本は、古くから土地、建物に対して所有権があり、所有することによって、所有者は、税(年貢)を納めてきました。 建物も財産には違いないのですが、土地は、建物のように老朽化することもなく、どういう状態(宅地、農地、山林)であっても、面積は不変であり、限られているので、一番の財産と思われてきました。 それに対して、ヨーロッパでは、歴史上王制であった国が多く(現在でも王制の国はありますが・・・)土地(国土)は統治する王の物という考え方があります。 長年土地は王の物であるという感覚で過してきたために、当然の事ながら土地に対する個人の所有権という感覚が薄くなります。 そして、そういう場合に建物を作る場合には、すべての土地を王が所有しているために、王が所有する土地を借りて、その上に建物を作るということになります。 借地と言っても、統治している王から借りるのですから、借地料は発生しませんし、もし発生したとしても、民あっての王ですから、住居に関する分の税(年貢)は微々たる物になります。 建物を建てようとする人にとってみたら、土地にかかる費用が少なくて済みますから、その分を建物に注ぎ込むことが出来ます。 建てた本人にしてみれば、自分の資産(金)を注ぎ込んだ建物ですから尚更のことですが、建てた本人でなく、その建物を受け継いだ者にしても、長い期間壊れないで残っていますから、当然の事ながら愛着もわきます。 建物というのは、愛着を持って、建物管理(掃除、手入れなどのメンテナンス)を住んでいる当事者がしていけば、より一層長持ちしますから、そういう人の連鎖でも、建物が壊されないで残っていきます。 同じような建築様式で建てた街並みが、長い期間残っていれば、建物だけでなく、その街並みにも魅力が発生し、価値が高まります。 元々、建物を重要視していますから、もし街並みが出来れば、自分の建物だけでなく、そういう建物群の街並みとして保存をしようという動きが出てきます。 個々の建物でも寿命が長いのですが、集団になるともっと寿命が長くなり、そういう街並みに住むこと自体がステータスにもなります。 日本でも、その場所に住むことをステータスにしてる場合もありますが、例えば、大都市であるとか、高級住宅街であるとかで、あくまで土地の金額が高い場所に対して価値を見出しています。 こういう状況ですから、日本がヨーロッパのようになるのは難しいと思います。 |
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湿気、結露について |
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日本は、寒暖の差がある四季があるので気温も一定ではありませんが、雨が降る場合でも梅雨の時期や長雨の時期もあり、どうしても湿度が高くなりがちです。 夏は暑く、冬は寒いのですが、建物はと言うと、居住空間に空調設備を入れて、夏は涼しく、冬は暖かくなるようにしています。 部屋の温度を一定に保つために断熱材で囲ったり、部屋を密閉化したりしていますが、密閉すればするほど外気温との差が生じ結露します。 建物というのは、空調が効いてる居室だけではありません。 例えば屋根裏のスペースを例にあげますと、屋根に直射日光が当たり、その熱によって屋根裏スペースの空気の温度が上がります。 その熱くなった空気の逃げ道がなければ、直射日光を受けている間中温度が上がり続け、簡単に外気温より高くなり、夜になって気温が下がれば、屋根裏の中の空気も同じように下がりますが、下がる段階で結露が生じます。 今の建物は、居室内の温度を一定に保つために、どんどん密閉化されていますが、それによって、どんどん結露しやすくもしています。 屋根裏スペースを例に挙げましたが、建物を支えている基礎部分にしても、地面に一番近い位置で、湿気を持ちやすいのに、今は、細かい部屋の間取りにしている場合が多く、そのために基礎が迷路のようになっており、通気口が作ってあるとは言え、通気しづらいようになっている場合が多いですので、同様に通気しやすいように考えないと、土台部分が結露してしまいます。 結露しないようにするためには、風通しの良い隙間だらけの家が良いのですが、物騒な世の中でもありますので、そういう訳にはいきません^^;; そうなると、建物内の結露を防ぐ手立ては、その建物を作る際に、いかに通気を良くするように考えて作るかにかかっていると思います。 |
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後に地域の財産となるよう願い、作った建物 |
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下の2枚の写真の建物は、サイトのフォトや建築模型で紹介している建物の写真です。 2つの建物は、それぞれ木造、SRC造と構造も違いますし、用途も商業テナントミックス用と有料老人ホーム用と違いますが、両方とも施主の希望として、市(地域)に建造物の財産として残すために、改修(修景)や新築をしたのが目的です。 私にとっても地元ですから、地元にとって財産となるような建築物を残したい(作りたい)という施主の思いに賛同しましたので、プランニング、コーディネート、プロデュースすることにしました。 |
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なつかしや | リッチライフ OASIS 犬山 | ||||
左の木造の建物は、犬山市の本町にあるのですが、城下町の中で、犬山城へ向かう際、城まで行くのに、一本道の本町通りと東西に通っている新町・魚屋町通りと交差している要所の場所になります。 同じ愛知県でも、名古屋市には、軍需工場が多かったので、第二次世界大戦時にも焼夷弾等による爆撃で焼け野原になった部分が多く、昔からの建造物が残っているのが少ないですし、土地の高度利用化に伴い建て替えをしてるために、戦後に建てられた建物の方が多いのですが、犬山城下の旧城下町は、戦禍を免れ、そのままで残った建物が多い上に、中心市街地が時代と共に駅や駐車場を併設してる場所の方に移動したため、旧中心市街地である本町通りに住んでいる人も、商売のために建て替えるという需要もあまり発生しなかったために、戦前に建てたままで残っている建物が多く存在しています。 この左側の建物(地図上では、なつかしや)も、その一つでしたが、戦前からの建物でも、いったいいつ頃に作られた物なのか? それは、建物の構造材を見て、だいたい見当がつきました。 愛知・岐阜県では、1891年(明治24年)10月28日に直下型地震の濃尾大震災がありました。その当時のデータからM8.0(M8.4とする説もあり)と推測されるくらいの規模の地震ですので、当然犬山でも被害はありました。 その当時の資料を見ると、民家も被害を受け、倒壊した家屋が多かったのですが、犬山城も被害を受け、櫓などが倒壊しています。その際に、犬山城主の成瀬家が、本町通りで倒壊した家屋の修復をするために、城の倒壊した部分(柱や梁など)の材料を提供しています。 なつかしやの構造材が正にその材料と推測できるのですよね。 それらの材料をお城で使っていた期間がどれくらいなのかは、分かりませんが、少なくとも、使いまわしをして、翌年の1892年になつかしやの構造材になってからでも、110年以上経過しています。 お城に使っていた材料ですから、当然の事ながら木の質も良く、今ではかなりの金額を出さないと手に入らない代物です。 本町通りは、街並みとしても残っているので、それらの物を後世に残すためにも、解体、新築でなく、建物を改修する場合の基本パターンの一つとして、出来る限り残して改修することにしました。 ただし、昔の建て方ですから、耐震に対して考えていないので、今の方法で計算し、開口部を隠蔽した場合など入れれる場所には、クロスで筋交いを入れ、計算上耐震基準をクリア出来るようにしておきました。(露出で筋交いが入っているのも、デザイン面だけでなく、隠蔽の壁部分だけでは、筋交いが足りないからです。) 柱、梁などの構造部分を残して、内部造作、外壁漆喰塗り、屋根瓦葺き替えと、残りの殆どの部分を改修する結果になりましたし、材料を無垢材や本物にこだわりましたので、改修費用も新築で建てれるくらいの約1800万円かかっています。 この場所に建ってからでも110年経過していますから、木造の店舗用の法定償却年数の20年からすれば、5倍以上の年数を経過していますので、資産価値としてはゼロですが、時代の重みと言うか、新築では絶対に出せない味を出していると思います。
改修した建物に対して、右側の写真の有料老人ホームは、SRC造で新築になっています。 駅前立地ということもあり、過去に何度となく建て替えが行われてきた場所ですし、場所が犬山城の外堀の外側になり、江戸時代には、駅もなく(当然ですがw)田畑だった所ですから、残すべき建物も存在していませんでした。 古い建物を保存しただけでは、観光客頼りになってしまい、観光客が少なければ、商売をしていても生計が成り立ちませんので、誰も商売をやろうとせず、街の発展はありません。 街として成り立つには、その場所で生活をする最低限の定住者人口が必要になります。 マンション建設によって定住者人口を増やす方法もあるのですが、今の日本は高齢化社会です。周囲の自然環境が良い場所に住みたい方も見えると思いますが、高齢になっても、行動するのに便利な場所に住みたい方もみえます。 犬山は、濃尾平野の北の端になりますので、山もあり、自然環境も豊かな所ですが、犬山駅まで歩いて3分くらいの位置と、駅まで近く、日常買回り品については、駅の東口にスーパー(7&I)もありますので、不便さは無く、県都である名古屋市の名古屋駅に出るにも特急で24分くらいで行けますので、出歩くにも便利な所です。 ならば、もっと利便性が高い名古屋市内に作ればいいのに、と考えそうなものですが、名古屋の市街地では、手に入れにくい物が犬山市の旧犬山町(旧市街地)には、あるからです。 何故犬山に作ったのかと言うと・・・ 優良な支持地盤を浅い位置に持っているからです。 日本は地震列島ですし、東海地区は、東海、東南海、南海地震が起きると言われて久しい場所です。 名古屋市は、犬山市より南にありますので、それだけ海まで近くなりますが、重量がある高層建築物を建てる場合に、その建物を支えるための支持層までが深く、杭をかなり長い距離で打ち込む必要があります。 ですが、所在地は、地盤が固く 支持地盤の上にそのまま建物を乗せる形で作ることが可能です。 実際に建築した際には、建物が地下部分を持っていますので、支持地盤の上部より深く掘る必要が生じましたので、支持地盤を(硬すぎてパワーショベルでは掘れなく、ドリルで揉みながら削っていきました^^;;)えぐり、支持地盤と一体化した基礎の上に建物が建っています。 ちなみに、設計するためにボーリング調査をしたのですが、調査した場所は、地下があっても問題なくちょうど支持地盤に乗るくらいだったのですが、それ以外の場所で支持地盤が浅い所がありました。調査を1箇所でなく、離れた場所を2箇所くらいしておけば良かったと思いますが、300坪くらいの土地でそんなにも違うなんて、誰も考えなかったですね。 老人ホームと言えども、入居時に健康な人が対象ですから、車を所持してる方も当然みえます。その方々の駐車場が必要でしたし、その駐車場を地下に作りましたから、地盤がどういう状態でも計画変更は無かったですけど、掘削用のドリルが何度も折れるくらいの地盤が硬いというのも、想像以上でした^^;; 写真では分かりにくいのですが、全面100×200×20の石器質タイル貼りになっています。タイル1枚でも重いですから、もし剥離して落ち、人に当たったりでもしたら、間違いなく大怪我をします。 万が一にも落ちないように、外壁は工場にてタイルを貼り付けたプレキャストにし、その(ハーフ)PC板と一緒に壁部分の鉄筋を配筋をしてから、コンクリートを打設するという方法で作っていきました。 PC板の場合は普通S造なのですが、居住性を高めるためにはRC造がいいですし、各居室の大きさ(7400×8400)を四方の柱だけで持たせるためには、RC造では、柱、梁が太くなりすぎて居住空間が狭くなります。 SRC造であれば、骨格として鉄骨がありますので、PC板を留めておくことも出来ますので、SRC造にしました。 以前に耐震上必要な、杭、鉄筋、コンクリート量を減らして建築された建物の耐震偽装問題が世間を騒がせたのですが・・・ この建物は、これでもか、これでもかと、地震が起きた場合に備えて作ってありますし、もし阪神淡路大震災級の地震があったとしても、若干の被害だけで済むような耐震グレードで作ってあります。 地震が多く、いつ巨大地震が起きても不思議でない状況で、長く残るような建物を作ろうとすると、どうしても地震に強い建物にする必要がありますので、構造にかかる費用を惜しまず作ることになります。 全体のバランスがありますので、外壁だけでなく、内部もそれなりの仕様になっているために、その結果、総工費は18億(正確には消費税が発生しますので18億9000万です。)になったのですが・・・、当初20億の見積りから、内容を殆ど変えずに18億までしたのですから、施工会社はしんどかったでしょうね^^;; ちなみにその金額は、その当時、この老人ホームと同じボリューム(同じ延べ床面積)の普通の分譲マンション(耐震偽装したのとは違います)を3棟建築した合計金額と同じくらいでしたから、簡単に言えば、分譲マンションの3倍の坪単価をかけて作ってあります。 居室の数が30室ですから、18億9000万を単純に30で割ると、一居室あたり6300万になりますが、60歳以上で入居時健康な方が夫婦で入居した場合の費用が、広い部屋の場合で4625万円になっています。(入居時の年齢が70歳以上、75歳以上と年齢によって金額が少なくなっています。) この金額は、終身利用権という権利ですから、入居した当事者は死ぬまで利用することが出来ますが、譲渡は出来ません。 分譲マンションとこの老人ホームとでは、片や、財産として自分の物となり、片や、終生過せることを保障はされているけど、自分の物にはならないという差があります。 例えば、この老人ホームの3分の1くらいの金額で建てられた分譲マンションを3150万円くらいで買ったとします。買えば自分の財産となりますから、マンション購入費以外にも年々固定資産税や都市計画税を払っていくことになります。 それに対してこの老人ホームの場合は、分譲マンションの3倍の費用をかけ、年老いても安心に過せるように作ってあり、入居に関わる費用は分譲マンションの約1.5倍にはなりますが、基本的なサービスも料金内に含まれていますし、自分の物にはならないので、固定資産税も都市計画税も発生しません。 数字から見れば、3150万と4625万ですから、3150万の方が値打ちのような感じがしますが、実際には、一居室あたり2100万で作ったのが3150万であり、6300万で作ったのが4625万なんですよね。 自分の物にならない点についても、もし仮に自分の物になったとしても、死んだら持っていけません。相続対象の財産として残るだけのことです。 子が年老いた親の面倒を見さえすれば、何も親がわざわざ有料老人ホームに入る必要もないのですから、親の面倒を見ないような子に対して財産を残す必要あるのでしょうか? 親子関係がそういう状態なら、私なら自分達が働いて稼いだ分を自分達が生きてる間に使ってしまえばいいのじゃないかな? って思いますね。 同じ有料老人ホームでも、賃貸マンション程度の坪単価の建築費で建てて、建築費を抑え、それに伴い入居時必要な金額を抑えている老人ホームもありますが、無茶苦茶安いというわけではありません。 事業として成り立たなければなりませんから、やっぱり、それなりの価格設定なんですよね。 今は、老人ホームの請負契約をした時期と比べると、材料費が高騰していますから、建築コストも上がっています。 その当時から4年程しか経過していませんが、コストとして2割ほどアップしています。2割アップであれば、20億の2割アップで24億なのですが、ここ最近に担当営業と「今作ったら、いくらぐらいかかるのだろう?」と話したら・・・「たぶん、30億でも難しいかも知れないですね」でした。 仮に30億としたら、一居室あたり1億になってしまいます^^;; 長持ちするように考え作った建物ですが、同程度の物を今作ったら、4年前の1.5倍以上の費用がかかるのですから、「作るなら今だ」という4年前の判断が正しかったことになります。 数字の設定そのものが普通の有料老人ホームより高いので、現時点では、建物を見てこういうことを見抜いた方々だけが入居されているようですが、いつになったらこの建物の良さに気づいてもらえるのでしょうね。 巨大地震が起きたら、違いは一目瞭然になるのですが・・・ 出来ることなら、起きて目の当たりにする前に気づいてもらいたいですね。。。 両方の建物共、日本の常識からは、かけ離れたくらいの費用を投資していますが、何しろ建造物として残すためです。(木造の方はもう110年以上経過していますから、もう残っているのですが・・・) 私も施主の方も、法定償却年数の50年後には、死んでいませんが、「いい物を作って残してくれた」と思われるような物にしようとしたら、こうなってしまいました。 はたして、50年後には、どうなっているのでしょうね。 |
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コストはイニシャルコストとランニングコストの合計で・・・ |
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建物は作って終わりではありません。作ってからの維持管理も必要ですし、電気、ガス、水道などの水光熱費もかかります。 大きな空間を作れば、その場所の空調をするために、大きな能力を持ったエアコンが必要になりますし、噴水など水を多く使う物を作れば水道料が多くかかります。 そういった水光熱費にしても、イニシャルコスト(初期投資費用)の際に考えて作れば、同じ効果で使用料を減額する方法もありますので、ランニングコスト(維持管理費用)を抑えることも出来ます。 新築時から建物の通気が良くなるように考えて作っておけば、建物が湿気で痛むこともなく、長持ちするのですが、通気が悪い状態であると、新築間もない時期でも、かびてきたり、土台や根太が木であると腐ってしまう場合もあります。 建物を支えているのが基礎ですが、その基礎に一番近い場所にあるのが、土台です。 土台が腐ってしまったら、土台をやりかえる必要が出ますが、なんせ建物の一番下の部分です。家ごとジャッキアップして土台を差し替える方法もありますが、当然費用がかさみます。 家ごとジャッキアップして土台を差し替える費用を出して修繕するくらいなら、壊して建て替えた方が割安で早い場合もあります。 世の中には、見栄え重視で、見えない部分のイニシャルコスト(初期投資費用)を抑え、見える部分にお金をかけて建てようとする人が多いのですが、肝心な部分の費用をケチったが為に、定期的に発生するランニングコストを建物を壊すまで払い続けるようになる人もいます。 通気が良くなるように考えて基礎を作った場合に、その部分にかかる費用と、通気を考えずにとにかく建物を支えることが出来ればいい程度で、それによって発生したランニングコスト(維持管理費用)を壊すまで払い続けた場合の合計額では、どちらが安く済むと思いますか? それは、前者なんです。 イニシャルコスト(初期投資費用)で多少高くなっても、ランニングコスト(維持管理費用)がかからない方法を最初から考えて作った方が安く済むのです。 例えば、炭を湿気取り用に入れたとします。炭が湿気を吸収したとしても、天日で干すなりしなければ、炭が吸収した水分を完全に出せませんが、炭のある場所は床下です。定期的に誰がその作業をするのでしょうか?場所が場所ですから、一旦入れたら、当分の間放置になると思います。 放置してる間と言えば・・・炭が湿気を吸収しても、床下の温度が上がれば、炭が吸収した水分が蒸発しますし、そうでなければ、湿気を吸収し続けますが、吸収できる能力を超えたら、炭を交換するか、今まで使っていた炭を天日に干して水分を蒸発させる必要が生じます。 元々床下内の通気が悪いために湿気を持つのですから、例え温度変化で一時的に蒸発したとしても、その蒸発した分が、床下内にこもり、再度炭が吸収することになります。 炭に大きさがあるために、吸収できる量も有限です。有限である以上メンテナンスが発生します。 最初から、メンテナンスが必要な炭を入れることを考えるのでなく、メンテナンスがいらないように通気しやすいように基礎を作るようにした方が、イニシャル・ランニングをトータルした場合のコストが低くなります。 屋根裏も同じように、アスファルトルーフィングですと、蒸れて結露しやすいですが、透過性ルーフィングを使用すると結露しにくいという結果が出ています。 メンテのしやすさは、メンテナンスが必要になった場合に作業をしやすいように考えておくことですが、同時にメンテナンスが必要にならないように考えることでもあります。 建物を作る際には、出来る限りランニングコストがかからないように、メンテナンスフリーになる部分を多く作るようにした方が、当初のイニシャルコストが多少高くても、ランニングコストと合計したライフサイクルコストで考えると、結果的に出費が少なくて済みます。 くれぐれもコストを考える場合には、イニシャルコスト(初期投資費用)だけでなく、ランニングコスト(維持管理費用)と一緒に考えるようにした方が良いと思いますね。 見える部分も大切ですが、基礎や構造は建物の根幹をなす部分で一番重要です。後からでも出来る部分については、竣工後でも可能ですが、基礎や構造はそういうわけにはいきません。 基礎(杭も含む)や構造に関しては、見えない部分であるからこそ、万全になるよう心がけてもらいたいですし、通気は建物にとって非常に重要なことですから、通気の良い建物になるよう考えて作ってもらいたいですね。 |
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建物を作る(設計する)上に於いて、まず考えることは・・・ | 欧米と日本の建物事情の違い |
愛知の県都、名古屋駅前の開発(再開発)状況 | 自宅を自分で改修してみました。 |
まさかりの独り言 | 街づくり、建築等関係法令 |
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