前述した通り、プロキシを利用しないでWebページを閲覧する場合、ユーザのコンピュータがWWWサーバに直接アクセスします。
ユーザのコンピュータ(要求元) ←→ WWWサーバ(要求先)
そのため、ユーザの様々な個人情報が要求先のWWWサーバとWebページ管理者に伝わってしまいます。実際にどのような情報が漏れているか確認するために、ブラウザにプロキシを設定していない状態で
ENV Checker
を見てください。インターネット上での個人情報とも言うべきあなた固有の様々な情報が筒抜けになっているはずです。例えば、ユーザのIPアドレス、ホスト名そしてブラウザやOSの種類等があります。
ちなみに、IPアドレスとはインターネット上でユーザのコンピュータを識別するための番号のことです。インターネットに接続されているコンピュータには全てユニークなIPアドレスが割り当てられています。一般家庭におけるインターネット接続の場合、通常は接続するたびにISPから固有のIPアドレスがユーザのコンピュータに自動的に割り振られます。
また、IPアドレスを人間に理解しやすい文字列に変換したものがホスト名です。ホスト名は多くの場合ユーザの利用しているISP(または学校や会社)やそのアクセスポイント(地域)を示す文字列を含みます。
では、このようなユーザ固有の環境変数が接続先のサイトに伝わることによってユーザはどのような影響を受けることになるのでしょうか。
一つにはプライバシーの問題が挙げられます。サイト管理者がアクセスログを取っている場合、どの辺りの地域に住み、どの組織(またはISP)に属している人が、いつ、どのページを、どのページのリンクから、どのくらいの頻度で、どのブラウザとOSを使って閲覧したのか、という情報が知られてしまうことになります。特に、掲示板やチャットに書き込みをした場合、投稿者の環境変数のうち幾つか(ホスト名等)がサイト管理者のみならず閲覧者全員に見えるように表示されることがあります。
このように、普通にインターネットに接続していると、自分の環境や興味の対象あるいは思想等を無闇に他人に知られたり、行動を監視されたりする恐れがあるのです。これではプライバシーも何もなく、安心してインターネットに接続できないという人も居ることでしょう。
また、自分のIPアドレスを無闇に知られるとそれだけインターネットを介した様々な攻撃を受ける危険に晒されることになります。例えば、サービス拒否(DoS)攻撃を受けたり、場合によっては自分のコンピュータを遠隔操作されたりする危険性も孕んでいます。特に常時接続や専用線接続をしているユーザにとっては無視できない問題です。もちろんこのような攻撃を受ける可能性は小さいのですが、全くないとは断定できません。
基本的にこのような攻撃をするためには対象のIPアドレスを知っている必要があります。逆にいえば、自分のIPアドレスを知られなければインターネットを介した攻撃を受ける危険性を抑えることができます。そのため、自分のIPアドレスを他人に無闇に知らせることは避けるべきだといえます。
さて、以上のような問題を解決するための手段としてプロキシの利用があります。前述した通り、プロキシを介してWebページを閲覧する場合、プロキシがユーザの代わりにWWWサーバにアクセスして目的のWebページを取って来てくれます。つまり、ユーザがWWWサーバに直接アクセスすることなく目的のコンテンツを閲覧することができます。
ユーザのコンピュータ(要求元) ←→ プロキシサーバ ←→
WWWサーバ(要求先)
そのため、この場合WWWサーバにはユーザのIPアドレスやホスト名の情報は伝わらず、代わりにプロキシの情報が伝わることになります。したがって、プロキシを利用することによって、Webサイト管理者や掲示板閲覧者等には自分が誰なのかという情報(IPアドレスおよびホスト名)を知られなくて済み、上記の問題を解決することが可能となるのです。
ただし、ユーザ(要求元)のIPアドレスを含む環境変数をサーバ(要求先)に伝えるプロキシも多く存在します。わざわざこのような要求元の細かい環境変数を記録しているサイトは稀ですが、完全に匿名性を確保するためにはユーザのIPアドレスをどこにも漏らさない匿名プロキシを利用する必要があります。
また、ほとんどの場合プロキシを介していてもブラウザの種類やリンク元の情報は接続先のサーバに伝わります。つまり、プロキシを利用することによって隠蔽できるユーザの情報は基本的にユーザが「誰」なのかだけです。
実際にプロキシを利用したときに要求先のサーバに伝わる環境変数を確認するためには、ブラウザにプロキシを設定した状態で ENV
Checker
を見てください。あなたのIPアドレスやホスト名等の情報がプロキシ固有の値に置き換わっているはずです。もしここであなたの本当のIPアドレスがどこにも表示されていなければ、匿名性が確保されたことになります。
ところで、プロキシによる匿名性確保には、接続元情報(IPアドレスまたはホスト名)によるアクセス制限を回避できるという副次的な効果があります。つまり、特定のサイトからアクセスを拒否された場合、そのアクセス制限の条件に合致しないプロキシを利用すれば、その制限を回避してサイトを閲覧することが可能となります。例えば日本からのアクセスを拒否する外国のサイトを閲覧する場合などにこの方法がよく用いられます。
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