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求刑死刑で無期判決以下の事件

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大阪心斎橋通り魔殺人事件


事件概要

 2012年6月10日午後1時頃、大阪市中央区東心斎橋の路上で、通行人の男女2人が包丁のようなもので刺されたと110番通報があった。現場に駆け付けた大阪府警南署員は2人を刺したとして、住所不定、無職の36歳男を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。

 刺された男女2人を病院に搬送。約1時間後に、東京都東久留米市の42歳男性の死亡を確認。午後5時10分頃、女性の死亡を確認。府警は容疑を殺人に切り替え捜査。翌11日、死亡した女性が中央区の飲食店経営の66歳女性と判明した。司法解剖の結果、2人の死因は出血性ショック。傷の深さは約12〜13センチに達していた。

 同12日、南署捜査本部は、36歳容疑者を殺人、銃刀法違反容疑で大阪地検に送検。7月2日、66歳女性を殺害したとして、殺人容疑で男(37歳)を再逮捕した。

 11月8日、大阪地検は約3ヶ月間の鑑定留置期間中に実施した精神鑑定結果などから刑事責任を問えると判断し、37歳容疑者を殺人と銃刀法違反の罪で起訴した。


大阪・心斎橋刺殺事件 写真特集 - 時事通信
更新日時:
2012年11月09日




事件経過
日付 摘要
2012 05/24 36歳男が新潟刑務所(B級)を満期で出所
(B級:懲役10年未満の再犯者・暴力団構成員などの粗暴犯を収容する刑務所)
06/09 36歳男が新大阪に到着。知人の家に宿泊
06/10 午後0時40分頃、36歳男が百貨店の調理用品売り場で包丁を購入
午後1時頃、36歳男が、大阪市中央区東心斎橋1の路上で、42歳男性の腹部などを包丁で刺した後、東へ約40メートル離れた場所で自転車に乗っていた女性の腹部や首を刺し、再度、男性を刺した場所に戻り、馬乗りになって再び刺した。被害者(女性)の背中に複数の傷
東心斎橋の路上で通行人の男女2人が包丁のようなもので刺されたと110番通報
大阪府警南署は2人を刺したとして、住所不定、無職の36歳男を殺人未遂容疑で現行犯逮捕
刺された2人を病院に搬送。約1時間後に東京都東久留米市の42歳男性の死亡を確認
大阪府警は南署に捜査本部を設置
午後5時10分頃、搬送先の病院で心肺停止状態となっていた女性の死亡を確認
06/11 死亡した女性は大阪市中央区島之内の飲食店経営の66歳女性と判明
06/12 司法解剖の結果、2人の死因は出血性ショック。傷の深さは約12〜13センチに達していた
大阪府警南署捜査本部は、36歳容疑者を殺人、銃刀法違反容疑で大阪地検に送検
06/13 大阪地裁は36歳容疑者について、22日まで10日間の勾留を認める決定
06/14 逮捕後の尿検査では覚せい剤反応なし
06/15 大阪府警は事件当日に容疑者の右手の血液をぬぐったガーゼ7点のうちの1点を紛失したと発表
07/02 大阪府警南署捜査本部は、66歳女性を殺害したとして、殺人容疑で37歳男を再逮捕
07/12 大阪地裁が大阪地検が請求していた37歳容疑者の鑑定留置を認める(期間:13日から10月15日まで)
10/18 大阪地検は、鑑定留置期間の約2週間延長を請求し、大阪地裁は31日までの延長を認める
11/08 大阪地検は、約3ヶ月間の鑑定留置期間中に実施した精神鑑定結果などから刑事責任を問えると判断し、37歳容疑者を殺人と銃刀法違反の罪で起訴
2013 12/11 公判前整理手続きで、大阪地裁(石川恭司裁判長)は、被告の再精神鑑定の実施を決定
更新日時:
2013年12月11日




起訴状況

刑法

(殺人)
第百九十九条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

銃砲刀剣類所持等取締法

第三十一条の三 第三条第一項の規定に違反してけん銃等を所持した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。この場合において、当該けん銃等の数が二以上であるときは、一年以上十五年以下の懲役に処する。

罪名 該当法 法定刑 量刑例
殺人罪 刑法第199条 死刑、無期、5年以上の懲役 主たる罪が殺人罪の場合
銃刀法違反罪 法第31条の3 1年以上10年以下の懲役

※ 死刑がやむを得ない場合死刑執行方法無期懲役仮釈放者の平均在所年数
更新日時:
2012年06月10日




過去の通り魔殺人事件(無差別殺傷事件)

 1999年以降に起きた被害死者が複数の無差別殺傷事件を抜粋。

事件日 事件 氏名 主罪 死者数 求刑 判決 裁判所 判決日 備考
1999/9/8 池袋通り魔殺人事件 造田博 殺人 2 求刑死刑 死刑 東京地裁 2002/1/18 確定
東京拘置所
控訴棄却 東京高裁 2003/9/29
上告棄却 最高裁第1小法廷 2007/4/19
1999/9/29 下関通り魔殺人事件 上部康明 殺人 5 求刑死刑 死刑 山口地裁下関支部 2002/9/20 死刑執行
広島拘置所
2012/3/29
控訴棄却 広島高裁 2005/6/28
上告棄却 最高裁第2小法廷 2008/7/19
2001/6/8 附属池田小事件 宅間守 殺人 8 求刑死刑 死刑 大阪地裁 2003/8/28 死刑執行
大阪拘置所
2004/9/14
控訴取下 大阪高裁 2003/9/26
2008/3/19 茨城土浦無差別殺傷事件 金川真大 殺人 2 求刑死刑 死刑 水戸地裁 2009/12/18 死刑執行
東京拘置所
2013/2/21
控訴取下 東京高裁 2010/1/5
2008/6/8 東京秋葉原無差別殺傷事件 加藤智大 殺人 7 求刑死刑 死刑 東京地裁 2011/3/24 確定
東京拘置所
控訴棄却 東京高裁 2012/9/12
上告棄却 最高裁第1小法廷 2015/2/2
2009/7/5 大阪此花パチンコ店放火殺人事件 高見素直 殺人 5 求刑死刑 死刑 大阪地裁 2011/10/31 確定
大阪拘置所
控訴棄却 大阪高裁 2013/7/31
上告棄却 最高裁第3小法廷 2016/2/23
2012/6/10 本件 礒飛京三 殺人 2          
事件リンク:無限回廊|wikipedia|自サイト

更新日時: 2019年3月12日




死刑の可能性(死刑適用基準での考察)

 参考までに、死刑に関してのページの死刑適用基準で紹介した以下の12項目の要件を本件に当てはめて書いてみます。ちなみに、どういう場合に各要件を満たすのかを死刑がやむを得ない場合のページに書いてあります。

要件 該当
1 犯罪の性質

 罪に問われる可能性があるのは殺人罪ですが、金銭欲や性欲などの利欲的な目的の強盗殺人の場合と同様に悪い無差別の通り魔殺人ですから罪質としては最悪になります。
2 殺人の計画性

 
「こういう事件を起こそうと思って、昨日の夜からうろうろしていた」と供述。

 その場ではなく、前日から前もって殺人を計画していたので、殺人計画性は強固なものとなります。
3 犯罪の主導性

 単独犯なので主導性はあります。
4 犯行の動機及び動機への情状

 
「自殺しようと包丁を買ったが、死にきれなかった。人を刺して殺してしまえば、死刑になると思ってやった」と供述。

 身勝手極まりない。動機に酌むべき事情はありません。
5 犯行態様、特に殺害方法の執拗性、残虐性

 42歳男性の腹部などを包丁で複数回刺した後、東へ約40メートル離れた場所で自転車に乗っていた女性の腹部や首を複数回刺し、再度、男性を刺した場所に戻り、馬乗りになって再び複数回刺しています。

 「助けて!」と懇願する被害者に対して容疑者は無言で何度も刺していますので、執拗性、残虐性は非常に高くなります。
6 結果の重大性、特に殺害された被害者数

 
音楽プロデューサーの42歳男性と飲食店経営者の66歳女性の複数の方が被害に遭い死亡されています。
7 遺族の被害感情

 
容疑者の身勝手で突然家族を殺されたのですから、言うまでも無く、遺族の被害感情は峻烈になります。
8 社会的影響

 
通り魔殺人は無差別殺人ですので言うまでもありませんが、容疑者と被害者の間に血縁関係は無く、公共性が高くなります。第三者の誰もが被害に遭う可能性があり、社会的影響は最大になります。
9 犯人の年齢

 
事件日当日の逮捕時で36歳。18歳以上ですから死刑適用は問題ありません。
10 殺人の前科

 
この要件は、無期懲役仮釈放中の犯行で1人殺害など、直近の事件での被害死者は1人でも、通算すると複数死者になる場合など、被害死者が1人の場合で前科がある場合に考慮する項目です。本件は、複数殺人のため、この要件を考慮する必要はありません。

 ただし、本件容疑者は、覚せい剤取締法違反罪で2度服役。5月下旬に刑務所を満期出所したばかりでの犯行のため、再犯加重があります。
11 犯行後の情状

 42歳男性を複数回刺した(第1の殺人)後、逃げようとした66歳女性を複数回刺して(第2の殺人)、再度42歳男性を複数回刺しています。ただし、現場に駆けつけた警察官には抵抗することもなく、素直に応じて現行犯で逮捕されています。

 66歳女性が逃げようとしてるのを容疑者が刺していることからして、被害が拡大する可能性もありましたが、警察官が早く現場に駆け付けたことや周囲にいた人達が一斉に逃げたことで被害の拡大が防げたと思われます。
12 犯行後の反省

 
 

 現時点の情報を元に死刑適用基準の要件について、ざっと書いてみました。

 「犯行後の反省」がまだ分かりませんが、それ以外については、このように要件を満たしています。よって、証拠が伴なえば、裁判で「死刑がやむを得ない」という判断が出ても何ら不思議が無い状態です。

 現時点は起訴前ですが、殺人などの罪で起訴された場合は、裁判で罪を追及する立場の検察側は求刑死刑で臨む可能性がかなり高いと考えられます。
更新: 2012年6月11日



公判関係

第一審 大阪地裁(石川恭司裁判長) 裁判員裁判

事件番号:平成24年(わ)5639号|傍聴券交付情報:大阪地方裁判所
日付 摘要
2015 5/25 初公判 (冒頭陳述、罪状認否) 被告は「取り返しのつかないことをした。申し訳ありません」と起訴事実を認める。刑事責任能力について「完全でなかった可能性がある」と争う姿勢をみせた弁護側に対し、検察側は冒頭陳述で「覚醒剤による精神障害などはあったが影響は弱く、責任能力が著しく失われる状態でなかった」と完全責任能力があったと反論
5/26 第2回公判  
5/27 第3回公判  
5/28 第4回公判  
6/01 第5回公判 (被告人質問) 被告は弁護側から幻聴について問われ、「29歳から聞こえるようになった」と供述。薬物に手を出した時期について「15歳でシンナーを吸った」と説明。その後、大麻を使用し、暴力団に所属していた19歳の時に初めて覚醒剤を使用したと答える
6/02 第6回公判 (証人尋問) 起訴後に精神鑑定を行った鑑定医が証人出廷。覚醒剤による精神障害や幻聴はあるものの、「犯行に与えた影響は極めて乏しい」との鑑定結果が出たことを明らかに
6/03 第7回公判  
6/08 第8回公判 (中間論告) 検察側は完全責任能力を、弁護側は心神耗弱で責任能力は限定的とそれぞれ主張
6/15 第9回公判 (証人尋問) 南野信吾さんの妻が証人出廷 証人は「幸せな未来を奪った犯人を許せない。極刑を望みます」と涙ながらに述べる
6/16 第10回公判 (被告人質問、遺族の意見陳述) 被告は「私にふさわしい刑は死刑しかない」と述べる。犠牲者や遺族に対しては「一生謝り続けても償えない、取り返しのつかないことをした。申し訳ありません」と繰り返し謝罪
6/18 第11回公判 (論告求刑、最終弁論、被告の最終意見陳述) 検察側は被告に対して死刑を求刑。弁護側は「最も悪質とはいえない」と死刑の回避を求め、被告は「命ある限り一生償い続ける」と述べ、結審
6/26 第12回公判 (判決) 大阪地裁(石川恭司裁判長)は「無差別殺人は極めて残虐で、死刑を回避する理由が見いだせない」として、40歳被告に求刑通り死刑を言い渡し
2015年6月26日、弁護側は判決を不服として即日控訴

控訴審 大阪高裁(中川博之裁判長)
日付 摘要
2016 11/08 初公判 (冒頭陳述) 弁護側は「犯行時は心神耗弱状態だった」として死刑回避を訴え、検察側は控訴棄却を求める
12/22 第2回公判 (遺族の意見陳述、弁論) 被害者遺族が「死刑を受け入れてほしい」と意見陳述
2017 3/9 第3回公判 (判決) 大阪高裁(中川博之裁判長)は1審の死刑判決を破棄し、無期懲役を言い渡し
2017年3月23日、大阪高検は、裁判員裁判による1審の死刑判決を破棄し、無期懲役に減刑した41歳被告に対する大阪高裁判決を不服として最高裁に上告

上告審 最高裁
更新日時:
2017年4月6日




被告の判決状況

氏名 罪名 第一審 控訴審 上告審
求刑 判決 裁判所・日付 判決 裁判所・日付 判決 裁判所・日付
礒飛京三 殺人罪 求刑死刑 死刑 大阪地裁
2015/6/26
一審破棄 無期懲役 大阪高裁
2017/3/9
    最高裁
更新日時:
2017年4月6日



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