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死刑判決の事件

殺人事件、裁判員裁判、性犯罪のコンテンツで扱っている事件の一覧

長崎女性2人殺害事件(長崎ストーカー殺人事件)


事件概要

 2011年12月16日午後9時前、長崎県西海市西彼町風早郷の山下さん方で、山下さんの次男が帰宅し、家に明かりがなく居間の窓ガラスが割られているのを見つける。次男は、東京にいた父親に電話で伝える。父親は長崎県警西海署に通報。次男は近所に住む親類男性と家族を探し、9時10分頃、車の荷台に倒れているのを発見。110番通報した。

 県警西海署員が現場に駆け付けたが、荷台にいた2人の女性のうち、1人はその場で死亡を確認、もう1人は搬送先の病院で死亡を確認。死亡したのは、山下さんの妻(当時56歳)と母(当時77歳)の2人と判明した。

 長崎県警は西海署に捜査本部を設置し、殺人事件として捜査を始めた。司法解剖の結果、死因は失血死と判明。2人共複数回刺されていた。


 翌17日、長崎県警は、山下さん宅で、女性2人を包丁で複数回刺して殺害した疑いがあるとして、三重県桑名市霞町の無職、27歳男を殺人、住居侵入容疑で逮捕。18日、長崎地検へ送検した。

 2012年4月26日、長崎地検は、鑑定留置の結果、刑事責任を問えると判断し、無職の27歳男を殺人、住居侵入、窃盗罪で長崎地裁に起訴。5月1日傷害容疑で再逮捕(同21日追起訴)、同21日、脅迫容疑で再逮捕、6月1日、脅迫罪で追起訴した。
更新日時:
2012年6月2日




事件経過
日付 摘要
2011 10/29 山下さんが、長崎県警西海署に「千葉県に住む三女が元交際相手の男から暴力を受けたり、脅されている可能性がある。千葉県警に捜査してほしい」とストーカー行為による被害を相談
長崎県警は、千葉県警に通報
10/30 千葉県警は、男から事情聴取し、厳重注意。男は「二度と暴力を振るわない。自分から連絡は取らない」と話す
10/31 男が脅す内容のメールを送る
11/01 千葉県警習志野署は電話で男に警告
11/ 男は、三女などに、『お前の母親や父親、きょうだいを殺す』とメールを送る
12/09 千葉県警習志野署は、男を再度出頭させ警告。男は「自分から連絡は取らない」と応じ、実家のある三重県に帰る
12/12 三女は、9月と10月に自宅や千葉県習志野市内の路上で顔を殴られるなど怪我を受けたとして、千葉県警習志野署に傷害の被害届を提出
12/14 千葉県警は被害届を同日付けで受理。傷害事件として捜査を開始
男が三重県桑名市の自宅で父親に暴力を振るって行方不明に
12/16 午前11時頃、山下さん宅に向かって黒い服の男が歩き、その後をタクシーが付き従うようにゆっくりと走っているのを近くの住民が目撃
午後6時頃、男は、西彼町風早郷、山下さんの母、久江さん方に窓ガラスを割って侵入し、久江さん(77歳)を包丁で複数回刺して殺害
午後6時20分頃、男は、山下さん方で、山下さんの妻、美都子さん(56歳)を包丁で複数回刺して殺害
午後9時前、山下さんの次男が帰宅。家に明かりがなく居間の窓ガラスが割られているのを見つける
次男は、東京にいた父親の山下さんに電話で伝える。山下さんが西海署に通報
家族の姿が見えないため、次男は近所に住む親類男性と探す
午後9時10分頃、長崎県西海市の山下さん方の家族から「車の荷台にお母さんが倒れている」と110番通報
長崎県警西海署員が現場に駆け付ける
車の荷台にいた2人の女性のうち、1人はその場で死亡を確認、もう1人は搬送先の病院で死亡を確認
ワゴン車は施錠され、車内や敷地内には多数の血痕
12/17 午前8時、長崎県警は殺人事件として西海署に捜査本部を設置
司法解剖の結果、死因は失血死と判明
長崎県警は山下さんの娘と面識のある20歳代の男を長崎市内のホテルで見つけ任意同行。包丁2本所持
16日午後6時頃〜同20分頃に、山下さん宅で、女性2人を包丁で複数回刺して殺害した疑いがあるとして、長崎県警は、三重県桑名市霞町の無職、27歳男を殺人、住居侵入容疑で逮捕
12/18 午後、長崎県警は、27歳容疑者を長崎地検へ送検
12/27 長崎県警は、容疑者が所持していた2本の包丁から、死亡した2人の血液を検出したと発表
2012 01/04 27歳容疑者の刑事責任能力を判断するための鑑定留置(期限:1月4日〜4月10日)
04/09 長崎地検が鑑定留置延長申請。長崎簡裁は24日まで2週間延長を決定
04/26 長崎地検は、27歳男を殺人、住居侵入、窃盗罪で長崎地裁へ起訴
05/01 長崎県警捜査1課と西海署は、27歳容疑者を傷害容疑で再逮捕
05/21 長崎地検は、27歳男を傷害罪で長崎地裁へ追起訴
長崎県警は、ストーカー相手の女性の姉ら8人に脅迫メールを送ったとして、脅迫容疑で27歳男を再逮捕
06/01 長崎地検は、27歳男を脅迫罪で長崎地裁へ追起訴
更新日時:
2012年6月2日




起訴状況

刑法

(殺人)
第百九十九条  人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

(傷害)
第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(住居侵入等)
第百三十条  正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

(脅迫)
第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2  親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

罪名 該当法 法定刑 量刑例
殺人罪 刑法第199条 死刑、無期、5年以上の懲役 主たる罪が殺人罪の場合

ストーカー殺人の場合
傷害罪 刑法第204条 15年以下の懲役、50万円以下の罰金
窃盗罪 刑法第235条 10年以下の懲役、50万円以下の罰金
住居侵入罪 刑法第130条 3年以下の懲役、10万円以下の罰金
脅迫罪 刑法第222条 2年以下の懲役、30万円以下の罰金

※ 求刑死刑に対しての判決例死刑がやむを得ない場合死刑執行方法
更新日時:
2012年04月30日




警察対応の検証
日付 摘要
2012 01/26 警察庁長官は記者会見で「警察が相談を受け、捜査の最中に起きた事件であり、重く受け止めている」と述べ、事実関係の検証を進め、再発防止に取り組む方針を表明
02/01 千葉県警の幹部が、山下さんら遺族を初めて直接訪問。犯行を防げなかったことについて謝罪
03/05 千葉、三重、長崎の3県警幹部が、「重大事件に発展するという危機意識が不足していた」とする検証結果と、ストーカー規制法の積極活用など再発防止策をまとめ、遺族側に伝えるとともに謝罪
警察庁は、相談を受けた警察署の署長の責任を明確化し、組織を挙げて対応することや、主導的に対応する警察本部を決め、都道府県警間の連携を密にすることなどを指示する通達を出す
03/07 警察庁は、全国警察本部のストーカー対策担当者を集めた会議を開催。長官は約15分間にわたり「警察は人の命を守る最後のとりで。原点に立ち返ってほしい」と強い口調で訓示
03/22 被害届の受理を先送りした直後、習志野署の担当者が旅行に出掛けていたことが分かる
03/23 千葉県警は、59歳習志野署長を4月1日付で警務部付に異動すると発表
03/29 国家公安委員会は、千葉県公安委員会に対し、調査の点検などを求める異例の要請
更新日時:
2012年03月30日




ストーカー行為について

 ストーカー行為が起きる場合には、一方的に相手のことが気になり、つきまとう場合もありますが、元交際相手や元夫婦など、深い付き合いをしていた場合に多くあります。

 恋人同士であったとか、夫婦の関係であったとか、深い付き合いがあったとしても、恋人として付き合う(一緒にいる)のも、夫婦であるのも、あくまで、お互いにそういう気持ちであった場合に成り立ちます。片方がそれを止めようとすれば、その関係は終わりになります。

 そして、終わり(別れ)を切り出された相手が、その終わり(別れ)に納得できない時に、人によっては、暴力(DV)になったり、別れた場合でもストーカー行為に続きます。

 まず、ここで、何故、別れを切り出されたのかを考えないの? 長く付き合っていれば、それぞれに何らかの落ち度があると思いますが、別れを切り出された側は、「自分の何が悪かったのだろう?」と、何故、考えてみないの?

 自分が悪かった所を修正できて別れを回避できることもあれば、修正できても回避できない場合もあるけど、少なくとも次回の恋愛に、その修正が役立つ可能性が高くなります。

 それをしないで、暴力(DV)で相手を自分の思い通りにしようなんてのは、愚の骨頂です。恐怖で押さえつけても関係が好転するわけが無く、相手の気持ちがどんどん冷めていくだけです。

 自身が相手の立場になれば、すぐに分かりそうなことなのに、何故、それが分からないのかな?

 別れを切り出され → 暴力(DV) → ストーカー行為 → 殺人

 このような流れで殺人事件まで至ってしまった事例は、死刑、無期判決から、それ以外の有期刑でも何件かありますが、基本的に重い量刑となっています。私の知る限りですが、全て実刑で執行猶予付判決は見たことがありません。

 DV、ストーカー行為をするほど、相手に執着するのならば、まずは、何故、別れを切り出されたのか自分の胸に手を当ててよく考えろ。と言いたいですね。
更新日時: 2011年12月19日




相手の家族等を殺害したケース

 最近のストーカー殺人事件の中には、元交際相手の家族には違いありませんが、直接因果関係が無い複数の第三者が殺害されるケースがあります。

 ストーカー殺人と言えども、因果関係があり、被害死者が1名の場合は、検察求刑で死刑になることがまず無いので、個別に取り上げていませんが、複数の死者が出た場合は、死刑の可能性もあるため、可能性がある事件についてはページを作っています。裁判員裁判が始まってからでも、そういった例がありましたので、何件かのストーカー殺人事件のページが現にあります。

 ページをまとめていて不思議に思ったのが、ストーカーをしていた相手ではなく、直接因果関係が無い、家族等が殺害される事件が起きています。

事件 「耳かき店員」ストーカー殺人事件 宮城石巻3人殺傷事件 大阪平野区母娘殺害事件 本件
被害死者 耳かき店店員(21歳)
店員の祖母(78歳)
元交際相手の姉(20歳)
友人(18歳)
元交際相手(27歳)
元交際相手の母(61歳)
元交際相手の母(56歳)
元交際相手の祖母(77歳)
被告人 元会社員の男(41歳) 解体工の男(18歳) 無職の男(35歳) 無職の男(27歳)
検察求刑  求刑死刑  求刑死刑 求刑無期
判決 無期懲役 死刑 無期懲役
被害死者:ストーカー行為対象の女性ストーカー行為対象以外(無関係)の女性 年齢:被害者被告人共に事件時
大阪平野区母娘殺害事件 の求刑・判決部分(2012/05/28)更新

 短絡的に「邪魔な存在を消去すれば、問題が無くなる」などの発想でしょうが、殺人をすれば、警察などの捜査機関は本気で捜査します。現時点で判決が出ているのは2例ですが、2例共、求刑は死刑になっています。

 まず、事前にストーカー行為をしていますから、何らかの事件が起きれば、真っ先に疑われます。どんな微量であっても、証拠が残っていれば、対象が一人ですから照会も簡単です。一致すれば、身柄確保に動きますから、指名手配、逮捕、起訴、公判と、判決まで一直線になります。

 今の殺人罪は時効制度自体が無いですから、仮に逃げたとしても、一生指名手配で、死ぬまで安息の地はありません。

 なので、「問題が無くなる」どころか、「逮捕、起訴され、その後、裁判で有期や無期の懲役刑、罪が重い場合は死刑判決が下りて、自分が想い慕っている相手には、二度と会えなくなる」という状況に陥ります。

 事を起こす前に、その先に起きるであろうことを、何故、想像しないのかな? と、思ってしまいます。

 何故なら、死刑は、刑執行後の死んでからでないと外に出ることが出来ませんし、無期懲役でも、求刑死刑の無期懲役は、限りなく死刑に近い無期刑(マル特無期)になってしまうため、仮釈放が許可される見込みはまずなく、獄死するまで刑務所の中で過ごす終身刑になる場合が多いからです。

 仮に、死刑を免れた無期刑であっても、多くは死刑と同様に、死んでからでないと外に出れないのです。言い換えると、死刑も死刑に近い無期刑(求刑死刑の無期懲役)も、先の人生に希望がありません。

 そうなってしまってから罪の重さに気づいても手遅れなのですが・・・ 結局の所、実際に体験してみないと分からないくらい想像力の乏しい人が、こういった重大犯罪を犯してしまうのですよね。。。
更新日時: 2011年12月19日




死刑の可能性(死刑適用基準での考察)

 参考までに、死刑に関してのページの死刑適用基準で紹介した以下の12項目の要件を本件に当てはめて書いてみます。ちなみに、どういう場合に各要件を満たすのかを死刑がやむを得ない場合のページに書いてあります。

要件 該当
1 犯罪の性質

 三女と会わせないようにしたことによる一方的な逆恨みによる殺人になると思いますが、三女を得んがための利欲的な殺人行為であり、罪質としては、金銭目的の強盗殺人、性犯罪目的の殺人などと同様に悪質です。
2 殺人の計画性

 「
殺す」旨のメールを何度も、何人にも送っていること。事前に凶器を複数用意し、三女の自宅を確認。ガラスを割り住居に侵入し、逃げまどう被害者に対して執拗に複数回刺して殺害していたことなどにより、かなり以前から殺人を計画していたことが伺えます。

 かなり以前から殺人を計画していたことがいろいろな証拠から伺えますので、殺人計画性はかなり強固だったとなります。
3 犯罪の主導性

 単独犯なので主導性はあります。
4 犯行の動機及び動機への情状

 
容疑者は、三女の母親(56歳女性)に三女の居場所を教えるよう電話でしつこく聞き、断られると「殺してやる」と脅していました。

 親が子供を守ることは当たり前の事なので、容疑者に居場所を教えなくても恨まれる筋合いはありません。

 容疑者が自分の思い通りにならないことに対して、矛先を母親に向けた、身勝手な逆恨みによる殺人行為。よって、動機に酌むべき事情はありません。
5 犯行態様、特に殺害方法の執拗性、残虐性

 別棟の77歳女性方に侵入し、女性を包丁で数回刺して殺害。母屋に侵入し、母屋に居た56歳女性にも数回刺して殺害した。56歳女性の遺体には背中にも刺し傷があり、複数の部屋に血痕が残っていました。

 遺体や室内の状態から容疑者が強い殺意を持ち、逃げまどう56歳女性を執拗に追いかけて刺したことが推測される。よって、犯行態様などから、容疑者の強い執拗性、残虐性が伺えます。
6 結果の重大性、特に殺害された被害者数

 
77歳女性と56歳女性の2人が失血死で死亡。被害死者が2人と複数で結果は重大です。
7 遺族の被害感情

 
容疑者の勝手で突然殺されたのですから、言うまでも無く、遺族の被害感情は峻烈になります。
8 社会的影響

 
容疑者と被害者の間に血縁関係は無く、公共性が高くなります。第三者の誰もが被害に遭う可能性があり、社会的影響は最大です。
9 犯人の年齢

 
事件日翌日の逮捕時で27歳。18歳以上ですから死刑適用は問題ありません。
10 殺人の前科

 
この要件は、無期懲役仮釈放中の犯行で1人殺害など、直近の事件での被害死者は1人でも、通算すると複数死者になる場合など、被害死者が1人の場合で前科がある場合に考慮する項目です。

 本件は、複数殺人のため、この要件を考慮する必要はありません。
11 犯行後の情状

 
別棟で第1の殺人を犯した後、母屋で第2の殺人を犯し、隠ぺい工作で宅内の血痕を拭いたり、遺体を車の荷台に隠したりと、犯行後の情状としては悪いです。
12 犯行後の反省

 
逮捕以降、謝罪等しているとの記事をまだ見かけていません。よって、現時点で反省の色なしと判断します。

 現時点の情報を元に死刑適用基準の要件について、ざっと書いてみましたが、このように要件を満たしています。よって、証拠が伴なえば、裁判で「死刑がやむを得ない」という判断が出ても何ら不思議が無い状態です。

 現時点は起訴前ですが、殺人などの罪で起訴された場合は、裁判で罪を追及する立場の検察側は求刑死刑で臨む可能性がかなり高いと考えられます。

 死刑適用基準の要件を満たしていても、特段の事情があれば、死刑回避できる場合がありますが・・・

 三女が住んでいた千葉の家に転がり込み、無職。別れを切り出されたら三女に対してDV、別れても三女へのストーカー行為や家族を含めて脅迫メールをした挙句、三女の家族を2人殺害、隠ぺい工作までした自分勝手で粗暴な容疑者です。

 こんな状況ですから、はたして、裁判までに、死刑を無期まで減軽可能な被告(現時点では容疑者)にとって有利な事情が出てくるのか・・・ 甚だ疑問です。

 証拠等から冤罪の可能性も無いと思いますので、もし私が本件の裁判員でしたら、被告人に対して死刑の適用もやむを得ないと判断する事例になります。
更新: 2011年12月19日



被告は「犯人でない」と主張予定

 罪責などから死刑が相当であっても、罪を認め、内省を深め、遺族に対して誠心誠意謝罪し、遺族の処罰感情が和らげば、無期懲役に減刑される可能性があるのですが、その可能性を被告も含めて弁護側は放棄したようです。

被告(28)が、5月から始まる裁判員裁判で殺人罪などの起訴内容を否認することが3日、分かった。同日の公判前整理手続き協議の終了後、弁護人が明らかにした。殺人や住居侵入、窃盗罪のいずれも「犯人ではない」と主張する。女性にけがを負わせたとされる傷害罪は日時やけがの程度が違っているとする一方、女性のきょうだいら8人に脅迫メールを送ったとされる脅迫罪は認める。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0303O_T00C13A4CC1000/

 被告は「犯人ではない」と主張するようですが・・・ 事件翌日(2011年12月17日)に長崎市内のホテルで身柄が確保された際、凶器となった包丁を被告が所持していて、鑑定の結果、その包丁から被害者2人の血液が検出されたことが(2011年12月27日に)発表されています。

 ちなみに、2011年12月と古いことなので新聞社の元記事は削除されていますが、★長崎ストーカー巻き添え殺人事件の真相★ など、個人のサイトやブログに当時の記事が魚拓されています。参考までに。

 証拠も含めて考えると、「凶器の包丁は所持していたが、自分は犯人ではない」になりますが、弁護側(被告)はどういう主張をするのでしょうね。。。
更新日時: 2013年4月5日




公判関係

第一審 長崎地裁(重富朗裁判長) 裁判員裁判

事件番号:平成24年(わ)第75号等|傍聴券交付情報:長崎地方裁判所
日付 摘要
2013 05/14 初公判 (冒頭陳述、罪状認否) 28歳被告は「否認します」と起訴事実を否認。住居侵入、殺人、窃盗、傷害、脅迫の罪全てで無罪を主張
05/15 第2回公判 (証拠調べ) 検察側は2人の遺体写真を提示、家族の「死刑にしてほしい」との供述調書も読み上げ
05/16 第3回公判 (証人尋問) 事件当時、捜査に関わった警察官5人の証人尋問
事件翌日に長崎市内のホテルで筒井被告の任意同行に立ち会った警察官は、被告が偽名を使ってホテルの部屋に宿泊していたと証言。
また、「凶器はどこだ」との問いかけに対し、ウエストポーチの中と答え、確認したところ、タオルにくるまれた2本の包丁の柄の部分が見えたとした。
05/17 第4回公判 (証人尋問) 元交際相手の女性への証人尋問
元交際相手の24歳女性は、同居していた筒井被告から、鉄アレイで殴られるなど日常的に暴力を振るわれていたと証言
05/20 第5回公判 (証人尋問) ストーカー被害を受けていた女性の2人の姉への証人尋問
姉らは殺人事件前に女性の家族らに送られた脅迫メールについて「(出したのは)被告以外にいない」と証言
05/21 第6回公判 (被告人質問) 被告は「否認していたが、警察官から脅され、犯行を認める調書にサインした」などと供述。検察側は「聴取の様子は録音・録画されている」と取り調べの違法性を否定
05/23 第7回公判 (証拠調べ) 裁判所は捜査段階の自白調書を証拠採用。検察側は「女性を連れ戻した家族が邪魔で2人を刺殺した」とする被告の捜査段階の自白調書を読み上げ
05/24 第8回公判 (被告人質問) 被告は、弁護側の質問に答え「起訴されたようなことはしていない」と重ねて全面無罪を主張
05/27 第9回公判 (被告人質問) 被告は、被害者とDNA型が一致する血痕が付着していた衣服などの証拠は警察が偽造したものだと主張
検察側は女性への傷害罪に関連し、女性の顔や足などにアザの痕が残った写真も提示したが、被告は「暴力は振るっていない」と主張
05/28 第10回公判 (証人尋問) 被告の精神鑑定を担当した精神科医の証人尋問
医師は、鑑定中のやりとりなどを明かし「善悪の判別能力や行動制御能力に影響を及ぼすとは考えられない非社会性パーソナリティー障害」と証言
06/03 第11回公判 (遺族の意見陳述、論告求刑、最終弁論、被告の最終意見陳述)
女性の59歳父親は遺族として意見陳述し、「この世にいるべきではなく、死刑しか考えられない」と死刑を求めた。検察側は「2人の大切な命を奪った被告には自らの命をもって償わせるべきだ」として死刑を求刑
06/03
〜14
裁判官・裁判員評議
06/14 第12回公判 (判決) 長崎地裁は、「何の落ち度もない2人の命を理不尽に奪い、結果は重大」として求刑通り死刑を言い渡し
弁護側は判決を不服として即日控訴

控訴審 福岡高裁(古田浩裁判長)
日付 摘要
2014 03/03 初公判 (冒頭陳述) 被告は一審同様、無罪を主張。被告は「僕は犯人じゃない」と述べ、アリバイなどを主張。「警察はうその発表や隠蔽をした」と訴える
04/08 第2回公判 (被告人質問、弁論) 被告は無罪を主張。結審
06/24 第3回公判 (判決) 福岡高裁は、死刑とした一審長崎地裁判決を支持し、被告の控訴を棄却
2014年6月30日、29歳被告は判決を不服として上告

上告審 最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)
日付 摘要
2016 06/20 初公判 (口頭弁論) 弁護側は「警察が証拠を捏造した」などと改めて無罪を主張。検察側が「弁護側主張に根拠はなく、死刑判決は妥当だ」と上告棄却を求めて結審
07/21 第2回公判 (判決) 最高裁第1小法廷は31歳被告側の上告を棄却
2016年8月10日付けで最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)が、上告審判決に対する31歳被告側の訂正申し立てを棄却する決定。死刑判決が確定した。
更新日時:
2016年8月13日




第一審 論告弁論要旨

検察側論告要旨
 【犯行】
 犯人ではない人間が事件の翌朝、殺害に使われた出刃包丁などを持ち、被害者の血液が付いたコートなどを着用している偶然はあり得ない。被告は女性に「俺から離れたら、俺は絶対にお前の家族を殺す」と発言したり、家族へ脅迫メールを送ったりするなど動機もある。自白以外の証拠で犯人であることは明白だ。

 【自白】
 取り調べの様子を録画・録音したDVDなどで、被告は任意に供述している。自白の内容も詳細、具体的であるほか、被害者方を訪れた宅配業者とのやり取りは、犯行時刻にその場にいた者でなければ述べられず、信用性がある。出刃包丁を持っていたことなど不利益な証拠には、警察が捏造したと強弁するなど、荒唐無稽な主張をしており、公判での弁解は信用できない。

 【責任能力】
 精神科医の鑑定結果で、責任能力を左右する障害は認められなかった。鑑定は4ヶ月近くかけ被告や家族との面談などをしており、判断方法にも問題はない。鑑定は信用でき、結論は妥当。殺害の計画性や、警察から逃れるために携帯電話の電源を切るなどの行動は、被告に善悪の判断やそれに基づき行動をコントロールする能力が十分あり、完全責任能力を有しているといえる。

 【情状】
 犯行は凶悪極まりない重大事件で、動機や経緯はあまりに身勝手、理不尽で酌むべき事情は皆無だ。2人の殺害は、強固な殺意に基づく執拗、かつ残虐な犯行で計画的。落ち度のない2人が殺害された結果は重大で、女性の精神的被害なども深刻。遺族は一様に極刑を求めている。事件が与えた社会的影響も大きく、事件が再び起きないようにする必要がある。これだけの事件を起こしても被告は不合理な弁解ばかりで、反省の言葉もない。有利な事情を見いだせず、更生の可能性はなく、再犯に及ぶことは確実。死刑が相当と考える。

弁護側最終弁論要旨
 【犯人性】
 被告は住居侵入、殺人、窃盗、傷害、脅迫のいずれも行っていない。
 住居侵入、殺人、窃盗について(1)犯行翌日の警察官による職務質問の際、筒井被告が包丁や被害者の財布を所持していたかは疑わしい(2)被告が犯人とすると、職務質問の際に着用していたコートなどに少量の血痕しか付着していないのは不自然(3)被害者宅で採取された足跡痕と、筒井被告の革靴の足跡の合致は不明確(4)被告は犯行時間帯に犯行現場にはいなかった。
 これらの点から、被告が犯人であるとは言えない。
 女性への傷害について、「被告から暴力を受けて傷害を負った」という証言には不自然な点があり、被告が犯人であるかは疑わしい。女性が被告から暴行を受けていたと証言する11年9月下旬〜10月16日ころに撮影したとされるプリクラ画像では、とても仲が良さそうで、凄惨な暴力を毎日受けていたとは思えない。

 【自白調書】
 被告が容疑を認めた自白調書は、任意に作成されたものとは言えないし、内容に信用性もない。脅迫的な言葉で取り調べを受けたことなどから、調書に署名してしまい、その後も撤回できなかった。

 【責任能力】
 被告は心神喪失あるいは心神耗弱の状態だった。
 精神鑑定を行った精神科医は「非社会性パーソナリティー障害」のみと結論付けているが、疑問。同障害の要因などとして挙げられる生育史的特徴(周産期の問題など)や、劣悪な養育環境は、被告には該当しない。多角的な所見を得ないまま診断しているのではないか。発達障害を含む他の障害の可能性について十分考慮されないまま診断されているのではないか。
 仮に同鑑定を前提としても、被告は、行動をコントロールする能力を喪失しているか、または著しく減退しており、心神喪失あるいは心神耗弱の状態だった。

 【まとめ】
 被告は無罪。
更新日時: 2013年6月4日




被告の判決状況

氏名 罪名 第一審 控訴審 上告審
求刑 判決 裁判所・日付 判決 裁判所・日付 判決 裁判所・日付
筒井郷太 殺人などの罪 求刑死刑 死刑 長崎地裁
2013/6/14
控訴棄却 福岡高裁
2014/6/24
上告棄却 最高裁第1小法廷
2016/7/21
更新日時:
2016年7月21日



殺人事件、裁判員裁判、性犯罪のコンテンツで扱っている事件の一覧


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