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2010年8月27日に新しく出来た方の刑場を公開した際、旧刑場の場所が更地になっていたのが分かりました。東京拘置所の刑場は現在では新刑場の1つだけになっていますが、このページでは、新旧両方の刑場について書いていますので、読まれた方が刑場の新旧が分かりやすい様に、旧刑場について書いてある項目の表題には刑場(旧刑場)と、新刑場について書いてある項目の表題には刑場(新刑場)と、表題にカッコで新旧を追加しました。 |
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何故、東京拘置所が2刑場だと思うのか? |
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死刑執行には、法で規定されていなくても、慣例としてされてきたことがあります。 共犯関係にある者の死刑執行については同日執行。 死刑執行の時間帯は、午前中。 滅多に使われることがない刑場ですが、死刑確定者の収容人員が多い東京拘置所では複数執行になりやすいということもあります。 東京拘置所には、地下鉄サリンなどのオウム事件関連の死刑囚や死刑判決を受け上告中の被告が合計で13人収容されています。 1刑場を使い、8時半から3時間半だけという短い時間での13人執行は、物理的に無理だと思いますが、13人目が確定したら、死刑判決の共犯者の刑が全て確定しますので、いつ執行されても不思議ではない状況になります。 (13人全員の死刑判決が確定した後ですが)慣例によれば、13人の執行が同日にされることになります。 もし、刑場が2つあるとすると、午前中というのは無理であっても、半分くらいの時間で済みます。 東京拘置所が、舎房を新築した際に地下に刑場を設けたのにも関わらず、従前の刑場もリニューアルして2刑場体制にしてあるという考え方を私がしたのも、死刑が確定し東京拘置所に収容されている死刑囚の中にオウム事件関連(共犯者多数)の死刑囚がいるということがあります。 いずれ来るであろうXデイのために、2刑場体制にしてあるように思います。ただし、いくら2刑場あっても、午前中だけでは不可能ですから、もし午前中で死刑執行を終わらせるのであるなら、それが可能なように、前もって東京から近い拘置所にその人数分の死刑囚を移送しておいて同日執行するしか方法はないと思います。 午前中にこだわらなければ、東京拘置所だけでも対応可能だと思いますが、午前中にこだわると、1刑場2~3人としても、7~5刑場必要になります。 東京に2刑場あったとしても、それ以外で少なくとも3刑場必要ですから、東京に近い、名古屋、仙台、大阪あたりで同日執行する場合もあるだろうと思います。 |
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追記 2010年8月の東京拘置所の刑場公開の際、新北舎や旧刑場などが解体され、更地になっていたのが分かりましたので、東京拘置所の刑場は、(北収容棟の工事着工前に新刑場が存在していたため)南収容棟・中央管理棟の地下に新設された刑場のみとなっています。 |
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2010年8月27日に当時の千葉法相が「国民的議論の契機に」と、報道機関21社の記者1人ずつと代表撮影スタッフのみの参加という極めて限定的にですが、報道目的で東京拘置所の刑場を公開しました。 その際に、刑場内部の写真だけでなく、東京拘置所の収容棟をヘリから撮影したと思われる写真(右の写真)も一緒に公開されていました。 写真では、収容棟の後部(東側・以前の写真では更地の場所)に刑務官用の官舎と思われる建物が建ち、収容棟の北側(矢印の所・かつての新北舎や刑場があった場所)、収容棟の西側(かつての北舎や南舎があった場所)が更地に、かつ、かつての南舎の場所には違う建物が建っていました(写真の赤い部分は工事用車両?)。 |
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2008年6月に報道機関がヘリから撮影した写真には、新北舎や刑場、北舎、南舎もありましたし、収容棟の東側も更地のままでした。 拘置所は国の施設ですから、通常ならば、予算案が通過、入札参加を募集・受付、入札などの手順を踏んでいくと着工は10月頃になります。 更地だった場所に工期がある程度必要な高層棟が建っていますので、2008年10月以降、2010年8月までの約2年間に、拘置所東部に新官舎などを建て、南舎周辺を解体し別の建造物を建て、拘置所北部の北舎や新北舎などの建物が解体されたことになります。 東京拘置所の刑場は、南収容棟・中央管理棟が出来た際に一部の国会議員が視察していますので、その時点で出来ています。新刑場が出来、南収容棟が出来ても、旧刑場が残っていましたので、オウムの執行があるまでは旧刑場を残しておくかな?と思いましたが、旧刑場が無くなりましたので、東京拘置所の刑場も現在では新刑場のみの一つになっています。 旧刑場は、東京拘置所が巣鴨から小菅に変わった際に作られた刑場でしたが、その役割を終え、更地になりました。ただし、更地になったとは言え、事務所棟などの別の建物を建てるとは考えづらいです。 どちらかと言うと、今後その場所には、他の刑場跡地でもしているように、刑場だった部分を緑化し、死刑囚達の霊を供養するために供養塔が建立される可能性の方が高いと思います。 |
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東京拘置所の刑場(新刑場)を公開 |
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公開された東京拘置所の刑場内部 |
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刑場の状態(写真等から判断できること) 前室-執行室-吹抜け-立会室 と一直線に並び、横には廊下。廊下を挟んで、立会室の反対側に教誨室がある。 |
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日本の絞首刑では、首に通っている2ヶ所の動脈を圧迫することにより、脳への血流を止め、気絶させてから死に至らしめるという方法をとっていますが、首に対して必要以上に負荷がかかれば、落下の衝撃によって首が切断されてしまうことも可能性としてはあります。 落下距離は短い場合より長い方が、首にかかる負荷が大きくなりますし、同じ距離であれば、体重の軽い人より重い人の方が首に大きな負荷がかかります。 身長や体重は死刑囚ごとに違いますので、落下距離が死刑囚ごとに最適になるように調節する必要がありますし、到達地点直前では緩やかに止める必要もありますが、その微妙な調整を可能にするには電動ウインチが必要になりますので、部屋のどこかに固定されたウインチが存在します。 |
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まず、執行室の奥の柱の手前にウインチが格納されていると仮定した場合、その仮定が合っているのか? 執行時には必ず存在する絞縄の通り道になる位置に線を描いて検証してみます。 ウインチがあると思われる場所をスタート地点として、そこから床や柱にある金物、天井の滑車に絞縄を順に通していくと右の画像の様になります。 それぞれの金物で絞縄の方向を微妙に変えてありますので、死刑囚が階下に落下した際に余計な抵抗がかかりにくくなっています。スムーズに絞縄が通りますので、死刑囚はほぼ自由落下の状態で階下へ落下します。 |
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執行室の奥の柱の手前にある枠の位置は、金物とほぼ同一ライン上にありますし、他にそれらしき場所が見当たりませんので、ウインチ格納場所と判断しても問題ないと思います。 刑場が建築物の地下に存在していることを踏まえ、以上の点などから考えられることを、ざっと挙げてみます。 刑終了後、まず、宙吊りになっている元死刑囚の遺体を下ろしますが、その後、処置室でアルコールを使って清拭したりします。どの道、移動させて、清拭したり、死に装束に着替えさせたりするので、汚れている床に一旦下ろし、遺体を担架に乗せ、担架で運んで・・・などという作業をするのではなく、ストレッチャーに直接乗せ、絞縄を外し、その後の作業をするように思います。 ストレッチャーや棺桶、清拭用のアルコールなど、刑執行後に必要な備品は、両開きの扉の奥の部屋に入っていると思います。ただ、東京拘置所の死刑囚は多いですし、2名執行など複数の執行になる場合が多くあります。続けて作業しなければならないのに、納棺まで済ませた遺体を、いつまでも執行室の隣の処置室に安置しておくとは考えづらいですから、遺体を安置するための霊安室(遺体安置室)が刑場の近場にあると思います。 また、東京拘置所は地上12階地下2階建ての建造物なので、それなりの柱、梁が必要です(柱が意外に細いので地下はSRC構造かな?)。柱が執行室の四隅にしか見当たらないので、建物の構造上、ほぼ同じラインで前室の横の壁の後、立会室の壁の後に柱が存在していると考えられます。 前室は死刑囚が最後の教誨や正式に執行の宣告を受ける部屋です。また、立会室は、検察官、検察事務官、拘置所長、医務官などが刑の執行に立ち会う場所です。教誨室には机や椅子などがありましたが、前室、立会室にはないです。刑の執行に当たって必要な備品を収納しておく備品室(倉庫)が前室や立会室の近くに必要です。 前室では、仏教用の仏壇が見えていますが、死刑囚は必ずしも仏教とは限りません。仏壇の位置が扉から離れているので、仏教、キリスト教、神道、その他と、回転式で変更できるようになっていると考えられます。奥の部屋へ大きな機械を搬入するために観音開きの扉にしてあると思われますので、仏壇が入っている部屋は小さくとも回転用の台座を収納出来る広さが必要です。 空調・電気・衛生など設備が多いので、空調用の給排気ダクト、電気用の強電・弱電のコード類、衛生用の給排水管などが上階・下階へ抜けるための縦のスペース《シャフト(設備用PS)》が必要になります。 刑場の排水溝は少なくとも地下8メートルより下にあるため、排水を下水道に自然排水することが出来ません。執行室で生じた排水をポンプアップするために機械が必要ですし、その機械を設置しておくスペースも必要になります。 |
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東京拘置所の刑場(新刑場)フロアの予想平面図 |
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公開された写真からですが、刑場の状態がざっくりと分かりましたので、メディアの情報によっておおよその寸法が分かっている部分はその数字を考慮して、不明な部分は、だいたいこれくらいだろうと思われる寸法にして、刑場フロアの平面図を描いてみました。 |
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描くにあたって、建築基準法など、法で決められていることも考慮しましたが、実際に運用する際に問題があっては困りますので、一応、刑場という特殊性も考慮してあります。 例えば廊下幅ですが、死刑囚にとって、刑の執行は、自分の最後を意味します。素直に死刑を受け入れる死刑囚ばかりとは限りません。中には、最後のあがきをする死刑囚も居ます。 刑場には、そういう事態になっても問題がないように、死刑囚の周囲を警備隊員達が囲んだ状態で刑場に来ます。廊下はある程度の幅を必要としますが、警備上、広すぎても、狭すぎても駄目ですので、警備上問題ないと思われる寸法を廊下幅としてあります。 公開されたとは言え、まだまだ不明な部分が多いですので・・・ 例えば、この位置に柱があるのだから、構造上、こちら側のこの位置にも同様に柱があるだろうなどと、推測しながら描いてあります。 この平面図は推測の物ですし、寸法はメディアの情報でも例えば約6.8メートルと大雑把な数値でしたので、図面上に寸法は入れてありません。 |
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建物なので、四角になるように柱や梁を配置し、公開された刑場の部屋などを入れていきましたら、図の中に、用途不明場所AとBの2ヶ所が発生しました。用途不明場所Aは中廊下に接している場所に、用途不明場所Bは、前室の奥とか、立会室、ボタン室の壁の向こう側の場所にあります。 AとBでは、位置から用途が全く変わります。前回考えた時に、備品室とか、設備用PSなどが必要と書きましたが、例えば、Aは刑場の中廊下に面しているので備品室など居室とするのに適しますが、設備用PSなど機械類を設置するのには適しません。 また逆に、Bは、どこかに壁を作って前室の仏壇用の部屋と区切れば、前室まで音が響いたり、音が漏れたりすることはありませんから、設備用の機械や設備用PSなどを設置するのは適しますが、備品室では、刑場に備品を運ぼうにも、一旦ホール又は廊下の場所に出て刑場入口から入り直さないといけませんので備品室は適しません。 よって、用途不明場所Aには、備品室や待機室などの居室系に、用途不明場所Bには、設備用PSや設備用機械などが設置してある機械室になっている可能性があるように思います。 また、いくら場所が刑場とは言え、廊下が袋小路では災害時に2方向避難が出来ませんので、用途不明場所Aの端に、避難階段(特別避難階段)が存在しているように感じます。公開された写真などから刑場フロアの平面図を考えると、こんな感じになりました。 |
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刑場の予想平面図を描きましたので、ついでに刑場が収容棟のどのあたりにあるかを推測してみます。
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東京拘置所の刑場(新刑場)フロアの予想平面図(階下) |
前回は、執行までに関係する平面図を描きましたので、今回は、執行後に関係する階下の部屋について平面図を描いてみました。ただし、階下で分かっているのは、執行室の下の部分だけです。それ以外については、何も分かっていません。 ですが、執行後に元死刑囚に対してどういう処置をするのかを考えれば、必要な部屋が浮かんできますので、ざっと必要な部屋を挙げてみます。 まずは、元死刑囚の遺体を清拭したり、死に装束に着替えさせ納棺までの作業をするための処置室が必要になります。 また、執行の際に仕入れると、執行が分かってしまうため、あらかじめ用意しておく必要がある棺桶などを仕舞っておくための備品室が必要になります。 ちなみに、柩は、火葬場の窯のサイズによって大きさの最大寸法が決められています。棺桶は、標準サイズ(180cm)、大(190cm)の2種類を用意しておけば大抵の場合は対応出来ますので、あらかじめ用意しておくことが可能になります。 死刑執行の場合、心拍停止後さらに法によってそのまま5分間吊るされていますので、蘇生の可能性は無いと思うのですが・・・ 死亡後24時間は蘇生する可能性があるため、法によって24時間は埋葬が出来ません。
刑の執行をしたのに、蘇生したのでは困りますから、執行後24時間は、拘置所で安置する必要があります。そのため、遺体を安置しておくための遺体安置室が必要になります。 上階の刑場でも設備用PSや機械室が必要でしたが、下階にも同様に設備がありますので設備用PSや機械室が必要になります。 上階の執行室は、壁を隔てて隣にボタン室がありましたが、下階の執行室は、写真で見える部分も左の柱より右の柱が広くなっていますし、4本柱があります。構造上、間仕切り壁が無くても問題ありませんので、階下の執行室は上階の執行室とボタン室を合わせた広さにしてあります。また、吹抜け部分の空間を支えるためには、構造上、吹抜け部分の間仕切り壁は必要ですので、上階同様にしてあります。 (平面図は間仕切りを取り払った状態で描いてありますが)ただし、執行室の下部に清掃用の洗い場を設置した場合は、外部から直接見えない様に目隠しがあった方が良いので、一部、間仕切り壁を設けます。 |
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いろいろな状況を想定すると、広い部屋が必要になりますので、多くても2、3体の安置スペースの遺体安置室としては広めにしてあります。 このフロアは東京拘置所の最下階になりますから、遺体安置室の場所としては適しています。ここでなくても、同一フロアの別の場所に存在している可能性はあると思いますが・・・ 遺体安置室ではなく、別の部屋を考えた場合、刑場の隣ということで、他の部屋をもってきづらい点があります。また、刑務官の心的負担を少しでも軽くするには、移動距離を最小限にする必要もありますので、この位置に遺体安置室を配置するのが適していると思います。 |
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もし私が、刑務官や死刑囚の動線や刑務官の心的負担の軽減、設備や機械の配線、配管、配置、竣工後のメンテナンス方法などを考え、必要な部屋を刑場に配置したとしたら・・・ こうなりました。 上階については、公開された部屋のみ分かりましたし、階下については、立会室から撮った執行室の下の部分しか分かっていません。それ以外は不明なので、実際には、どうなのか分かりませんが・・・ 私が描いた平面図では、刑場に必要と思われる部屋は、上階、下階共に、この一角に収まっています。 |
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元死刑囚の遺体の引き取り手がいない場合 |
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死刑囚は、死刑がやむを得ないと判断されたくらい重い罪を犯していますから、元々天涯孤独の身であった場合よりも、犯した行為によって家族や親戚などと絶縁状態になってしまった場合が多くあります。 なので、死刑執行後、法務省から死刑囚の遺族に連絡がとれないとか、連絡が届いても遺体の引き取りを拒否したりする場合が多くあります。 また、死刑囚は、刑の執行によって死ぬことが分かっていますので、死後、自分の身体を解剖用として献体するように、前もって手続きをとっておく場合もあります。 元死刑囚の献体受け入れ先が決まっているとか、遺体や遺骨を引き取る遺族がいる場合は問題ありませんが、死刑囚に限らず、死刑確定者や受刑者などが獄死した場合にも同様に引き取り手がいない場合があります。 そういう場合に、元死刑囚や元受刑者の遺体や遺骨・遺灰の行方はどうなるか・・・
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このように、遺体の引き取り手がいない場合は、刑事施設の長(拘置所なら拘置所長)が刑務官に指示し、葬儀を行い、遺体を火葬し、遺骨や遺灰を墳墓や納骨堂に埋蔵することになっています。 ちなみに、東京の場合は、豊島区南池袋4丁目の都立雑司ヶ谷霊園の一角に法務省納骨堂があります。 雑司ヶ谷霊園は現在の東京拘置所がある小菅とは離れていますが、東京拘置所の前身である巣鴨拘置所があった場所(現在のサンシャインシティ)から近い位置にあります。 |
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刑場が設置してある全国の7刑事施設 |
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全国には、死刑囚を収容する刑事施設が、各矯正管区ごとに1施設あり、その刑事施設の中に刑場(死刑執行施設)も設置してあります。 東京、名古屋、大阪、広島、福岡の5拘置所は、拘置所内に刑場が設置してありますが、札幌拘置支所は併設の札幌刑務所に、仙台拘置支所は併設の宮城刑務所に刑場が設置してあります。 死刑が確定した場合や死刑判決を受けた被告は、基本的に管轄矯正管区で刑場が設置してある拘置所(拘置支所)に収容されますが、高松矯正管区の事件で死刑が確定した場合には刑場が設置してある大阪矯正管区の大阪拘置所に移送されます。 |
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映画「絞死刑」(大島渚監督)について |
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日本の絞首刑では、地下降下式を採用しているのが、いろいろな資料から分かっています。 ですが、実際の刑場を見たことがある人となると・・・ 7拘置所(拘置支所)勤務の刑務官や執行に関係した検察官など、極一部の人に限られます。 古い映画ですが、刑場(死刑場)がどのようになっているのかを分かりやすく解説してありますので、参考までに紹介しておきます。 |
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